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作成日:2026/02/20
育児休業後の復帰ポジションでトラブル化した職場の実例

復帰後の“配置”がなぜトラブルになるのか?経営者が見落としがちな論点

育児休業からの復帰は、本来であれば「おかえりなさい」と迎え入れる前向きな場面のはずです。しかし実務の現場では、復帰後の“配置”をめぐってトラブルに発展するケースが少なくありません。社会保険労務士として相談を受ける中で感じるのは、経営者が「配慮したつもり」の対応が、結果として「不利益な扱い」と受け取られてしまう構造があるということです。
たとえば、育児との両立を考えて「負担の軽い部署に異動させた」「責任の重い業務から外した」といった対応は、一見すると合理的に思えます。しかし本人に十分な説明や同意がないまま行われた場合、「キャリアを奪われた」「実質的な降格だ」と感じられることがあります。とくに役職や評価、将来的な昇進に影響が出る場合、その不満は強くなりやすいのです。
一方で、企業側にも現実的な事情があります。育休中に代替要員を採用した、組織体制が変わった、以前と同じポジションが存在しない――こうした事情を踏まえずに「元のポジションに完全復帰させなければならない」と思い込むのもまた誤解です。問題は、「何が法的に求められているのか」「どこまでが合理的な配置変更なのか」を整理せず、感覚的に判断してしまう点にあります。
さらに見落とされがちなのが、「説明責任」の重要性です。復帰時の面談を形式的に済ませたり、配置理由を十分に共有しなかったりすると、本人の不安や不信感が蓄積し、後になって不利益取扱いとして争われる可能性が高まります。
育児休業後の配置は、単なる人事異動ではなく、法的配慮とキャリア形成が交差する繊細な局面です。善意だけでは解決できないからこそ、制度とルールに基づいた判断が求められます。復帰後の“配置”がトラブルになる背景には、この見えにくい論点の整理不足があるのです。

育児休業後の復職で起こりやすい労務トラブルの背景

社会保険労務士の視点で見る「配慮」と「不利益変更」の境界線

育児休業後の復帰対応において、最も判断が難しいのが「配慮」と「不利益変更」の境界線です。社会保険労務士として現場に関わる中で強く感じるのは、企業側は“良かれと思って”行った措置であっても、法的には不利益取扱いと評価される可能性があるという点です。
たとえば、育児との両立を考慮して残業のない部署に配置した、責任の重い業務から外した、管理職から一般職へ変更した――これらは一見すると合理的な配慮のように見えます。しかし、役職や賃金、評価、昇進機会に影響が及ぶ場合、それは「実質的な不利益変更」と判断されるリスクがあります。とくに本人の同意が十分に得られていない場合や、説明が形式的だった場合には、トラブルに発展しやすくなります。
一方で、企業側にも人員配置や業務体制の都合があります。育休中に組織再編が行われた、代替要員が正式に配属されているなど、元のポジションにそのまま戻せない事情も現実には存在します。このような場合でも、重要なのは「合理性」と「説明の過程」です。なぜその配置が必要なのか、他に選択肢はなかったのか、本人の希望はどこまで反映されたのか――これらを丁寧に整理し、記録として残しておくことが、後の紛争予防につながります。
社会保険労務士の視点で見ると、配慮と不利益変更を分けるポイントは大きく三つあります。第一に、変更内容が客観的に見て不利益と言えるかどうか。第二に、その変更に合理的な業務上の必要性があるか。第三に、本人への十分な説明と協議がなされているか。この三点が揃っていなければ、「配慮」のつもりが「違法な取扱い」と評価される可能性が高まります。
育児休業後の配置は、企業の善意だけでは乗り越えられない繊細な領域です。だからこそ、感覚ではなく法的視点を踏まえた判断が求められます。配慮を“正しい配慮”として機能させるためには、その境界線を理解し、制度として整理しておくことが不可欠なのです。

復帰ポジションをめぐる典型的な対立構造

業務内容変更・降格・賃金減額が争点になるケース

育児休業後の復帰において、最も紛争に発展しやすいのが「業務内容の変更」「降格」「賃金減額」が伴うケースです。社会保険労務士として実際の相談を受ける中でも、企業側は“やむを得ない配置転換”と考えていたものが、従業員側からは“明確な不利益取扱い”として受け止められている例が少なくありません。
まず業務内容の変更についてです。育児との両立を理由に、顧客対応や管理業務など責任の重い仕事から外し、補助的業務へ配置するケースがあります。しかし、その変更によって評価基準が変わったり、将来の昇進機会が実質的に閉ざされたりする場合、単なる配慮ではなくキャリア上の不利益と判断される可能性があります。とくに、本人の意向を十分に確認せずに決定してしまうと、「一方的な職務変更」として争われやすくなります。
次に降格の問題です。役職を外すこと自体が直ちに違法とは限りませんが、業務上の合理的な理由がなく、育児休業を取得したことを理由としていると受け取られれば、不利益取扱い禁止に抵触するおそれがあります。企業側が「時短勤務だから管理職は難しい」と判断しても、その説明が不十分であれば、差別的な扱いと評価されるリスクがあります。
さらに賃金減額は、最もトラブルになりやすい論点です。業務内容や役職変更に伴い賃金を下げる場合でも、その減額が合理的かつ相当であるかどうかが厳しく問われます。就業規則や賃金規程に明確な根拠がなく、個別判断で減額している場合には、無効とされる可能性も否定できません。
社会保険労務士の視点で重要なのは、「変更の内容」と「変更のプロセス」の両方を整理することです。業務上の必要性があるのか、他の選択肢は検討したのか、本人と十分に協議したのか――これらを丁寧に積み重ねることで、争点化するリスクは大きく下げられます。
育児休業後の配置は、企業運営と個人のキャリアが交差する場面です。業務変更・降格・賃金減額が伴う場合こそ、感覚ではなく法的根拠と合理性を軸に判断することが、深刻なトラブルを防ぐ鍵となるのです。

法的に求められる企業の義務と判断基準

育児・介護休業法と不利益取扱い禁止の考え方

育児休業後の復帰ポジションをめぐるトラブルを理解するうえで欠かせないのが、育児・介護休業法における「不利益取扱い禁止」の考え方です。社会保険労務士として現場で実感するのは、この法的枠組みを正しく理解していないことが、意図せぬリスクを生んでいるという点です。
育児・介護休業法では、育児休業の申出や取得を理由として、解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないと明確に定められています。この「その他の不利益な取扱い」には、降格、減給、不当な配置転換、昇進機会の喪失などが含まれる可能性があります。つまり、「解雇していないから問題ない」という単純な話ではないのです。
特に問題になりやすいのが、「形式上は人事異動だが、実質的に不利益が生じている」ケースです。例えば、復帰後に責任の軽い業務に変更され、それに伴い評価や賞与が下がる場合、企業側が「配慮の一環」と説明しても、育休取得を理由とした不利益と評価されるリスクがあります。重要なのは、変更の理由が育休取得そのものに結びついていないか、そして合理的な業務上の必要性があるかどうかです。
また、短時間勤務制度を利用していることを理由に、管理職登用の対象から外すなどの対応も慎重さが求められます。業務遂行が客観的に困難である合理的理由がなければ、一律に排除することは差別的取扱いと判断される可能性があります。
社会保険労務士の視点では、不利益取扱いの有無は「結果」だけでなく「経緯」も重視されます。本人との面談の有無、説明内容、選択肢の提示、記録の保存など、プロセスが適切であるかどうかが、後の紛争で大きな意味を持ちます。
育児・介護休業法は、単に制度利用を認める法律ではなく、「制度利用によって不利にならないこと」を保障する法律です。復帰後の配置を検討する際には、この視点を常に意識し、感覚的な判断ではなく、法的枠組みに基づいた慎重な対応を行うことが不可欠なのです。

社会保険労務士が関与して改善した実例

面談・配置再設計・社内ルール整備による解決プロセス

育児休業後の復帰ポジションをめぐるトラブルは、感情的対立に発展しやすいテーマですが、適切なプロセスを踏めば解決へと導くことは可能です。社会保険労務士が関与する場合、まず重視するのが「丁寧な面談」と「事実の整理」です。
あるケースでは、復帰後に補助的業務へ配置された社員が「実質的な降格だ」と不満を抱き、社内で対立が生じていました。企業側は「育児との両立を考慮した配慮」と説明していましたが、本人の意向確認や書面での説明は十分ではありませんでした。そこで最初に行ったのが、社労士同席のもとでの再面談です。これまでの経緯、会社の判断理由、本人の希望や不安を整理し、双方の認識のズレを可視化しました。
次に取り組んだのが、配置の再設計です。元の職務へ完全復帰させることが難しい事情はありましたが、業務内容を分解し、責任範囲を段階的に拡大するプランを作成しました。評価制度との整合性も見直し、「将来的なキャリアの道筋」を明確に示すことで、本人の不安を軽減しました。単なる配置変更ではなく、復帰後のキャリア設計として提示したことが、合意形成の鍵となりました。
さらに重要なのが、社内ルールの整備です。このケースでは、復帰時の面談フローや配置判断基準が曖昧だったため、再発防止策として@復帰前面談の実施、A業務内容の文書化、B評価・賃金への影響の明示、C一定期間後のフォロー面談実施、といった手順を社内規程に落とし込みました。これにより、今後は担当者の判断に依存せず、一定の基準で対応できる体制が整いました。
トラブル解決のポイントは、「正しさを主張すること」ではなく、「納得できるプロセスを積み重ねること」です。面談による対話、合理的な配置再設計、そしてルールとしての明文化――この三段階を踏むことで、対立は“組織の改善機会”へと転換できます。
育児休業後の復帰対応は、感情と制度が交差する場面です。だからこそ、第三者の視点を入れながらプロセスを整え、再発を防ぐ仕組みを構築することが、企業にとって最も現実的で持続可能な解決策と言えるでしょう。

まとめと結論(復帰支援は“善意”ではなく“制度設計”で行う)

育児休業後の復帰対応は、企業にとって「配慮」の姿勢が強く求められる場面です。しかし、これまで見てきたとおり、善意だけに頼った対応は、時として不利益取扱いと受け止められ、深刻な労務トラブルへと発展します。問題の本質は、企業側に悪意があるかどうかではなく、「判断基準と手続きが制度として整理されているかどうか」にあります。
多くの経営者は、「本人のためを思って」「現場の負担を考えて」といった思いから配置を決定します。その姿勢自体は決して否定されるものではありません。しかし、復帰後の業務内容、役職、賃金、評価への影響が十分に検討されず、説明や協議も不十分なまま進められれば、結果として会社への不信感を招きます。善意は、制度という裏付けがあってこそ“正しい配慮”として機能するのです。
復帰支援を制度設計として捉えるためには、いくつかの視点が欠かせません。第一に、復帰前後の面談フローを明確にすること。第二に、配置変更の判断基準と手続きを整理すること。第三に、評価・賃金制度との整合性を確保すること。そして第四に、その内容を就業規則や社内ルールとして明文化し、誰が対応しても同じ水準で運用できる体制を整えることです。
このように仕組み化された復帰支援は、単なるリスク回避策ではありません。従業員にとっては安心して制度を利用できる環境となり、企業にとっては人材定着や組織の安定につながります。育児と仕事の両立が当たり前となる時代において、復帰対応の質は企業の信頼性そのものを左右します。
復帰支援は「その場の判断」で乗り切るものではなく、「あらかじめ設計された仕組み」で行うものです。善意を制度に昇華させることこそが、育児休業後のトラブルを防ぎ、持続可能な組織運営を実現する鍵となるのです。

社会保険労務士に相談するメリットとサポート内容(全国対応可能)

育児休業後の復帰対応は、法的配慮・人事制度・現場運営が複雑に絡み合う領域です。「どこまでが配慮で、どこからが不利益なのか」「元のポジションに戻せない場合はどうすべきか」――こうした判断を、経営者や担当者だけで抱えることは大きな負担になります。そこで心強い存在となるのが、社会保険労務士(社労士)です。
社労士に相談する最大のメリットは、法的観点と実務観点の両面から整理できる点にあります。育児・介護休業法の不利益取扱い禁止、安全配慮義務、配置転換の合理性といった論点を踏まえつつ、企業の実情に即した現実的な解決策を提示します。単に「違法かどうか」を判断するのではなく、「どうすればトラブルを防ぎながら組織を回せるか」を一緒に考えるのが社労士の役割です。
具体的なサポート内容としては、復帰前面談の設計、配置判断基準の整理、評価・賃金制度との整合性確認、就業規則や社内規程の見直しなどが挙げられます。また、トラブルが顕在化している場合には、事実関係の整理や面談同席、対応方針の立案など、早期解決に向けた支援も行います。第三者の専門家が入ることで、感情的な対立を抑え、冷静な協議が可能になります。
さらに重要なのは、「再発防止の仕組み化」です。一件のトラブルをきっかけに、復帰支援フローや人事制度を見直し、将来同じ問題が起きない体制を構築することが、企業の安定経営につながります。社労士はその制度設計と運用定着までを伴走支援します。
近年はオンライン面談やクラウドツールの活用により、全国どこからでも専門的なサポートを受けることが可能です。地域に専門家がいない企業や、複数拠点を持つ企業でも、同じ水準の支援を受けられます。
復帰対応は、企業の姿勢が問われる重要な場面です。専門家とともに制度を整え、安心して働き続けられる環境をつくることが、企業の信頼と成長を支える大きな力となるでしょう。
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