作成日:2026/02/03
企業価値を高める「見せる就業規則」とは?
就業規則は“守り”だけでなく“魅せる”時代へ
これまで「就業規則」といえば、労働基準法に基づき義務として整備するものであり、労働条件を明示する“守りの文書”という認識が一般的でした。しかし近年、採用難や働き方の多様化、企業の社会的責任(CSR)への注目が高まる中で、就業規則のあり方も大きく変化しています。いま、就業規則は単なる内部文書ではなく、「企業価値を高める発信ツール」としての役割を担い始めているのです。
特に中小企業では「うちは大企業のようなブランドがない」と悩む経営者の声もよく聞かれます。しかし、そうした企業こそ、自社の理念や労働環境、評価制度、柔軟な働き方への対応などを“見える化”し、外部に伝えることで、魅力ある企業として選ばれる可能性を広げることができます。そして、その核となるのが「就業規則」です。
「うちはこういう働き方を大事にしている」「こういう姿勢の人を評価している」「こんな制度で働く人を守っている」――これらの企業の方針や価値観を、体系的かつ法的裏付けをもって示せるのが就業規則の強みです。単なる労働条件の羅列ではなく、理念や制度が一貫したストーリーとして伝わる構成にすれば、それは会社の“顔”として採用時・取引時・融資時など、様々な場面で企業の信頼性を支える資料となります。
また、社会保険労務士として現場で感じるのは、優れた就業規則を持つ企業ほど、社内トラブルも少なく、従業員の定着率も高いということです。それは、制度が形だけでなく“運用されている”からこそ。社員にとって就業規則が「安心の拠り所」であり、経営者にとっては「経営メッセージを浸透させるツール」になっているのです。
これからの時代、「従業員がいるから必要」「労基署に見せるため」といった受動的な作成・管理では、企業の信頼を得ることはできません。逆にいえば、就業規則を“語れる文書”に変えることで、会社の文化・制度・ビジョンを内外に発信できる競争力の一部に変えられるのです。
つまり、就業規則は“守り”の文書から“魅せる”文書へと進化する時代に入りました。これを機に、自社の就業規則を見直し、「この会社で働いてみたい」と思ってもらえるストーリーを組み込んでいくことが、採用力・定着力・信頼性のすべてを底上げする第一歩となります。
企業価値を高める「見せる就業規則」とは何か
社会保険労務士の視点で見る“選ばれる企業”の制度設計
“選ばれる企業”になるために必要なのは、給与や福利厚生の数字だけではありません。近年の求職者は、「この会社が何を大切にし、どのような姿勢で従業員と向き合っているか」といった“見えにくい部分”を重視する傾向が高まっています。その中核を担うのが、就業規則をはじめとする人事制度の設計です。つまり、制度そのものが企業の価値観や文化を映し出す「鏡」であり、「選ばれる理由」になりうるのです。
私が特に感じるのは、企業が採用に苦戦する背景には、必ずと言っていいほど「制度の曖昧さ」があります。就業規則が法定事項のみで構成されていたり、評価・処遇・働き方に関する方針が記載されていなかったりすると、応募者は会社の中身を知る術がなく、魅力を感じにくくなります。反対に、制度の内容が明確で、自社の考え方が反映された規程を提示できる企業は、それだけで信頼性を高め、応募者とのミスマッチを防ぐことができます。
では、“選ばれる企業”に共通する制度設計のポイントとは何か。まず第一に、「価値観の可視化」が挙げられます。評価制度や処遇方針において、どんな行動を重視するのか、どのような人材を成長させたいのかを明文化し、就業規則や社内資料に組み込んでいくことが重要です。これにより、会社の文化が制度に反映され、「自分に合いそう」と感じる応募者との接点が生まれます。
次に重要なのは「柔軟性と透明性」です。テレワーク制度、副業許可、短時間勤務制度など、働き方の多様化に対応する項目を就業規則に反映させている企業は、現代の働き手から見て非常に魅力的です。また、それらの制度がどのような条件で使えるのか、誰が対象かといったルールを明確にしておくことで、運用時の不公平感や誤解も回避できます。
さらに、「職場の安心感」を制度で支える視点も欠かせません。たとえば、ハラスメント防止規程やメンタルヘルス対応制度、相談窓口の設置などを明示しておくことで、「この会社は従業員を守ろうとしている」というメッセージが伝わりやすくなります。これもまた、信頼され、選ばれる企業の大きな要素です。
制度は“あって当たり前”の時代から、“見せて差がつく”時代へと進化しています。社会保険労務士としては、経営者の思いや方針を丁寧にヒアリングし、それを制度という形に翻訳することが使命です。そして、それを就業規則として可視化することで、単なる内部文書を、採用・定着・ブランド力向上に資する「戦略的ツール」へと昇華させていくのです。
「見せる就業規則」を導入する際の注意点
社会保険労務士が現場で指摘する誤解とリスク
“就業規則は法律にさえ沿っていれば問題ない”“内容は社員に詳しく伝える必要はない”――こうした考えが、現場で多くの誤解とリスクを生んでいることを、私は日々の相談対応を通じて実感しています。特に、企業が制度の本質的な役割や重要性を見誤っている場合、せっかく整備された就業規則が逆に“火種”となるケースも少なくありません。
たとえば、「制度はあるが、誰にも読まれていない」という状況です。法定事項を押さえた形式的な就業規則が社内に存在していても、従業員がその中身を理解しておらず、運用されていない場合、それは実質的に“無い”のと同じです。実際、トラブル時に「そんな規程があるなんて聞いていない」と社員が主張する場面は少なくなく、会社側が制度の周知や説明を怠っていた場合、規程そのものの効力が疑われることすらあります。
また、「理念や評価方針は制度に書かなくてもいい」という誤解も根強く存在します。確かに、就業規則の中に評価基準や等級制度を詳細に書き込む義務はありませんが、評価に関連する処遇(昇給・降格・賞与)に影響を与える制度であれば、一定のルールや仕組みが明文化されていることが、法的な観点からも求められます。これが曖昧なままだと、不当評価・不公平処遇といった主張を受ける温床になり得ます。
さらに、昨今の働き方改革や多様な就労形態に対応するための制度が導入されているにもかかわらず、就業規則がそれに追いついていないというケースも見受けられます。たとえば、テレワーク制度が運用されているのに、就業規則ではオフィス勤務前提の労働時間・休憩ルールしか規定されていない、という事例です。こうした“制度と現場のズレ”は、労務リスクを大きく高める要因になります。
私が現場で指摘するのは、こうした「周知不足」「制度と実態の不一致」「価値観の不明瞭さ」が複合的に絡み合うことで、従業員との信頼関係が損なわれる点です。就業規則とは、企業の方針や理念を示し、労働条件を守り、秩序ある職場運営を実現する“経営の羅針盤”であるべきもの。それを単なる義務対応で済ませてしまうことこそが、最も大きなリスクと言えるでしょう。
これからの企業に求められるのは、「守るための規程」だけではなく、「伝わるための規程」です。誤解を防ぎ、信頼を得る就業規則へとアップデートすることこそ、企業が選ばれ続けるための土台となるのです。
企業全体における「見せる就業規則」のメリット
採用・定着・ブランド力強化への波及効果
「人が採れない」「辞めてしまう」「会社の魅力をどう発信すればいいか分からない」――これらは、私が日々耳にする中小企業の共通課題です。その打開策として、今注目されているのが“見せる就業規則”の活用です。就業規則というと、どうしても「社内向けの法定書類」と思われがちですが、視点を変えれば、採用・定着・ブランド強化を同時に実現する“企業の信頼資産”となりうるのです。
まず、採用活動への波及効果について。求職者は求人票だけでなく、企業の公式サイトやSNS、さらには口コミサイトなどから、職場の雰囲気や制度の中身を調べています。そんな中、「当社の就業規則はこういう方針で運用しています」と明確に示している企業は、他社と比較して信頼性・透明性の面で一歩抜きん出ます。たとえば、フレックスタイム制度や副業容認、リモートワーク対応、ハラスメント防止規定、評価の公平性などを就業規則上に明記することで、「働きやすそう」「考え方が合いそう」と思ってもらえる確率が高まります。
また、入社後の「定着率」にも好影響があります。就業規則に理念や評価基準がしっかりと盛り込まれており、それが制度運用にも反映されている企業では、社員が「評価が納得できる」「不安なときに相談できる制度がある」「自分がどう成長していけるかが見える」と感じやすくなります。これは職場における“安心感”の醸成につながり、離職リスクを大きく低減させます。実際、当職が関与した企業の中には、制度整備後に離職率が大きく改善したケースも多数見られます。
さらに、こうした整備の積み重ねは、「企業ブランド」の強化にも直結します。現在では、経営の透明性や従業員への配慮、働き方の柔軟性といった観点が、取引先や金融機関の評価にも影響を与える時代です。きちんと制度を整え、可視化し、それを運用している企業は、ESGや人的資本経営の文脈でも評価されやすくなります。特に就業規則を含む人事制度を開示・説明できる体制があることは、社会的信用の裏付けになります。
私が提案したいのは、「制度を整える」だけでなく、「伝え方」まで意識することです。制度をホームページで一部公開する、採用時に説明するパンフレットを作成する、社員向けにガイダンスを実施する――こうした取り組みが、“制度があるだけ”から“制度が活きている企業”へと転換させ、結果として企業価値を底上げすることになるのです。
就業規則は、従業員に義務を課すための文書ではなく、企業の文化や想い、働き方の設計図を言語化するツールです。それを“見せる”ことは、単なる開示ではなく、採用力・定着率・ブランド力すべてに波及する「攻めの経営戦略」なのです。
まとめと結論(制度を“語れる会社”が信頼を得る)
これまで就業規則といえば、“あって当然”“見直しはトラブルがあったときでいい”といった受け身の扱いをされることが多くありました。しかし、社会的評価や人材確保が企業経営に直結する現代においては、就業規則は単なる社内文書ではなく、「企業の姿勢そのものを伝える発信ツール」としての性格を帯びつつあります。
実際に、採用の現場では「制度の説明がしっかりしている会社は安心できる」「どう評価され、どう働けるのか明確だったから入社を決めた」という声が増えてきました。また、従業員の定着率やエンゲージメントも、制度の透明性と一貫性が確保されているかどうかに大きく左右されます。つまり、“制度が語れる会社”――方針と仕組みが言語化され、それが社内外に伝えられている会社――こそが、信頼され、選ばれ、永く続く企業の条件となっているのです。
「どんな会社なのか」「どんな人を評価し、どんな働き方を支えるのか」「トラブルが起きたとき、どんな仕組みで対応するのか」――こうした情報は、経営理念と制度が連動し、それが就業規則に反映されて初めて、外部にも内部にも説得力をもって伝えることができます。
しかし、この“語れる状態”をつくるためには、単なる法令対応では不十分です。形だけの就業規則ではなく、自社の文化や価値観を踏まえ、評価・処遇・働き方・安心の仕組みなどを体系立てて組み込む必要があります。そして何より重要なのは、それを「運用する覚悟」と「伝える努力」です。これは経営者単独では難しいことも多く、制度設計のパートナーとして社会保険労務士の支援を受けることで、実現性と納得性の高い制度構築が可能になります。
社会保険労務士は、制度設計と運用の専門家として、法令遵守だけでなく“伝わるルールづくり”を支援します。単に就業規則を整えるだけでなく、経営者の想いを言語化し、働く人に伝わるかたちに落とし込む。この過程こそが、企業に「信頼」という無形資産をもたらします。
これからの時代、選ばれる企業・続く企業の共通点は、“制度を語れるかどうか”です。見せる就業規則、伝える人事制度、そして活かす運用体制――それらを整えることは、企業文化の構築であり、未来の人材への約束でもあります。ぜひ今こそ、自社の制度が“語れるもの”になっているかを見直すタイミングとしていただければと思います。
社会保険労務士に相談する理由とサポート内容(全国対応可能)
「就業規則の見直しをしたいが、どこから手をつければいいかわからない」「制度を整えたいが、法改正に追いつけない」「社内で作成したが、これで十分か不安」――こうした声は、全国の中小企業から寄せられる共通の悩みです。就業規則や人事制度は、単なる社内ルールではなく、企業の方向性と従業員との信頼をつなぐ“設計図”です。だからこそ、その構築・運用には専門的な視点と実務的な経験が欠かせません。
そこで重要なパートナーとなるのが、社会保険労務士(社労士)です。社労士は、労働法令の専門家であると同時に、制度設計と運用の実務に精通した国家資格者です。企業が抱える多様な人事・労務課題に対し、法的な正確性と現場での実現性を両立したアドバイスができる存在です。
たとえば就業規則一つとっても、「法律に沿って作成する」だけでなく、「自社の理念を制度に反映させる」「評価・処遇・勤怠などと矛盾なくつなげる」「従業員に伝わるかたちで周知・運用する」といった高度な調整が求められます。社労士はこのプロセスを一貫して支援し、形だけではない“活きた制度”づくりをサポートします。
さらに、採用・退職・労働時間・休職・メンタルヘルス・ハラスメントなど、労務トラブルの種はさまざまです。社労士はこうしたリスクに備えるためのルール設計や、トラブル発生時の初動対応にも対応可能です。予防と解決の両面から企業を支えることができるのが、社労士の大きな強みです。
また、近年では「見せる就業規則」「人的資本経営」「エンゲージメント向上」など、経営視点での制度運用が求められるようになりました。社労士は、これら新しいニーズにも対応し、企業ブランディングや採用力強化といった経営戦略と制度設計を結びつける支援も可能です。
そして、テクノロジーの進化により、社労士のサポートは全国どこでも受けられる時代になりました。オンラインでの打ち合わせ、クラウド共有による書類確認、遠隔での制度運用支援など、場所に縛られない柔軟な対応が可能です。地方企業であっても、都市部の先進的な事例を参考にしながら、実践的かつ戦略的な制度整備が進められます。
信頼され、選ばれ、永く続く企業を目指すために。まずは社労士との対話から、就業規則と人事制度の“価値ある見直し”を始めてみませんか。法律知識だけでなく、経営と現場に寄り添った提案ができる社労士が、全国対応でしっかりと伴走いたします。
メール:t-sh-j@takayama-office.jp
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