作成日:2026/01/23
内定後に発覚した経歴詐称に対し企業が対応を誤りやすいパターン
経歴詐称の発覚と企業対応に潜む“落とし穴”
「内定者の経歴に不審な点がある」「入社後に経歴詐称が判明した」――このような相談が、近年企業の人事担当者から寄せられるケースが増加しています。SNSや転職サイトの普及により、経歴の“盛り”や資格詐称などが発覚しやすくなった一方で、企業側が適切に対応できず、法的・ reputational なリスクに発展する事例も少なくありません。
経歴詐称の問題は、単に「嘘をついたから内定を取り消せばよい」という単純な話ではありません。労働契約法や判例では、「重大な詐称であり、企業がそれを理由に雇用を継続できないと合理的に判断できる」ことが明確でなければ、内定取り消しや懲戒解雇は無効とされるリスクがあります。また、不適切な対応によって労働者側から名誉毀損や精神的苦痛を理由とする損害賠償請求を受ける例もあります。
社会保険労務士として現場を見てきた立場から言えば、問題の本質は「経歴詐称自体の有無」ではなく、「企業側の採用フローと就業規則に“対応できる仕組み”が整っていないこと」にあります。たとえば、応募時に提出された情報の確認方法が曖昧であったり、採用条件通知書に経歴を条件として明記していなかったりすることで、後に企業側が不利な立場に立たされることが多々あります。
また、対応を誤る背景には、感情的な判断や“早く手を打ちたい”という焦りがあることも少なくありません。しかし、内定取り消しや解雇は労働契約上、極めて重い処分であり、その判断と手順には慎重さと法的根拠が求められます。社内で協議せずに一部の管理職だけで進めた結果、後から「手続きに瑕疵がある」と指摘されることも多く、問題が拡大する原因となります。
本記事では、内定・入社後に判明する経歴詐称の典型例や、企業が対応を誤りやすいパターン、そして社会保険労務士が現場で支援した防止策や解決事例を踏まえ、どのように「入口から仕組みで守る」体制を構築するかを解説します。採用は企業の“信用の入り口”。だからこそ、制度と手順を整えた上で、冷静に、かつ法的根拠に基づいた対応が求められるのです。
内定後・入社後に判明する経歴詐称の典型パターン
社会保険労務士の視点で見る“よくある経緯”と対応のズレ
経歴詐称が発覚したとき、企業が“感情的な反応”や“曖昧な判断”で対応を進めてしまい、かえってトラブルを招くケースは少なくありません。社会保険労務士の立場から見ると、経緯自体は非常に類型的である一方、その後の対応において“リスクの取り方”や“手続きの整合性”に大きなズレが生じていることが、問題の拡大要因となっています。
よくあるのは、次のような経緯です。入社後、業務の不適合や社内調査の過程で、履歴書に記載された職歴や資格に疑義が生じる。その後、同僚や元同僚、あるいはSNSなどから事実と異なる情報がもたらされ、企業側が事実確認を開始。しかし、確認作業が不十分なまま、上司が独断で厳しく叱責したり、退職を促したり、あるいは突然内定を取り消す通知を出したりする。こうしたプロセスには、往々にして「社内での法的な確認」や「本人からの正式な聴取」が抜け落ちています。
企業としては、「嘘をついたのだから即解雇もやむなし」という感覚に傾きがちですが、実務上は“詐称の内容”と“職務との関連性”、“入社決定に与えた影響の程度”などを総合的に判断しなければなりません。また、たとえ重大な経歴詐称であっても、手続きに瑕疵があれば、解雇や内定取消しが無効と判断されるリスクがあります。
特に、懲戒解雇を検討する際には、就業規則に「経歴詐称が懲戒事由である」旨の明記がなければ、処分そのものの正当性が問われます。しかし、就業規則の定義が曖昧であったり、社員に周知されていなかったりするケースでは、企業側の主張が認められにくくなります。
社会保険労務士が現場で支援する際には、まず「事実関係の正確な把握」と「本人への適切な聴取」「就業規則や雇用契約との整合確認」を徹底します。また、法的リスクを避けるための文書整備や、本人との話し合いの進め方にも配慮し、“誤解や対立を深めない出口戦略”を意識します。
対応を誤ると、労働審判・訴訟・SNS炎上といった二次被害を招きかねません。だからこそ、法的根拠と冷静な対応手順をもった社労士の関与が、企業のリスク回避に直結するのです。
経歴詐称に関する法的リスクと就業規則での対応可否
解雇・取り消しの判断基準と必要な手順とは?
内定後または入社後に経歴詐称が判明した場合、企業が最も慎重に判断すべきなのが「解雇」や「内定取り消し」という重い処分を選択してよいかどうか、そしてその進め方です。社会保険労務士として実務に関与する中で強く感じるのは、多くのトラブルが“判断基準の誤解”と“手順の省略”によって生じているという点です。
まず押さえるべき判断基準は、経歴詐称が「重大であるかどうか」です。すべての虚偽記載が直ちに解雇や内定取り消しを saying するわけではありません。判例上も、「詐称の内容が採否や配置判断に重大な影響を与えているか」「職務遂行能力や業務適性に直結しているか」「企業が真実を知っていれば採用しなかったと合理的に言えるか」といった点が総合的に判断されます。たとえば、必須資格の詐称や、専門職での実務経験の虚偽は「重大」と評価されやすい一方、軽微な職歴の誇張などは、処分の正当性が否定される可能性があります。
次に重要なのが、就業規則や内定通知書との整合性です。就業規則に経歴詐称を懲戒事由として明記しているか、内定時に「提出書類の内容が事実と異なる場合は内定を取り消すことがある」といった条件を明示しているかは、判断の大きな分かれ目になります。これらが曖昧なままでは、たとえ詐称があっても企業側の主張は通りにくくなります。
手順面で最も避けるべきなのは、「いきなり結論を出すこと」です。まずは事実確認を丁寧に行い、客観的資料を集めたうえで、本人から正式に事情聴取を行う必要があります。その際、感情的な叱責や一方的な決めつけは厳禁です。聴取内容は必ず記録に残し、社内で法的観点を含めた検討を行ったうえで、処分の可否を判断します。
社会保険労務士が関与する場合には、これらの判断基準と手順を整理し、「解雇・取り消しが相当か」「別の対応(配置転換・指導・注意処分等)が妥当か」を冷静に検討します。重要なのは、“処分ありき”ではなく、“リスクを最小化する選択”を行うことです。
経歴詐称への対応は、企業の毅然とした姿勢が求められる一方で、拙速な判断は大きな法的リスクを伴います。だからこそ、基準と手順を明確にし、専門家の視点を交えながら進めることが、企業を守る最善の道と言えるのです。
採用時の確認体制とトラブルを防ぐ実務ポイント
社労士が提案する「確認・記録・説明」の三位一体チェック
経歴詐称のトラブルは、発覚後の対応だけでなく、採用の「入口段階」での不備が原因となることが少なくありません。だからこそ、社会保険労務士として企業に提案しているのが、“採用時からの「確認・記録・説明」”を一体的に運用する仕組みです。これは、採用トラブルを未然に防ぐと同時に、万一の際にも企業を守る法的・実務的な防衛線となります。
まず一つ目は「確認」です。履歴書や職務経歴書、資格証明書など、応募者から提出された情報については、人事担当者が形式的に目を通すだけでなく、可能な限り第三者的な証拠や裏付けを取るべきです。具体的には、資格の有効性の確認、在籍証明書の提出依頼、採用面接時のクロスチェックなどが挙げられます。特に要注意ポジション(営業・管理職・技術職等)では、実務経験の真偽が直接業務品質に影響するため、深掘り確認が必須です。
次に「記録」です。採用の経緯や、内定通知・条件通知時のやり取り、面接時に説明された事項などは、後から“言った・言わない”の争点になりやすいため、書面または記録に残しておくことが重要です。高山社労士が支援する企業では、「採用決定経緯報告書」や「面接確認チェックリスト」などの様式を用い、採用の透明性と一貫性を確保しています。こうした記録があることで、後のトラブル時に企業の正当性を示す証拠となります。
最後に「説明」です。内定通知時には、就業規則の一部(経歴詐称への対応を含む)を添付し、「事実と異なる場合は内定取り消しの可能性がある」旨を明記することが大切です。さらに、雇用契約書や入社誓約書においても、虚偽記載が判明した場合の対応条項を明示し、本人からの署名・捺印をもらっておくことで、処分実施時の根拠が明確になります。
「確認・記録・説明」は、それぞれが独立して重要ですが、一貫した流れとして運用されることで、より強固なリスク管理体制となります。社労士はこれらを仕組みとして企業に根付かせるサポートを行い、“採用トラブルを事後対応ではなく、事前予防で潰す”実務力を提供します。
採用は企業にとって最初の信用契約。だからこそ、そのプロセスを丁寧に構築し、万全の備えで迎えることが、健全な労使関係の第一歩となるのです。
社会保険労務士が関与して円満解決した事例
誤解・感情的対立を回避したコミュニケーション設計の工夫
経歴詐称が発覚した場面では、企業側に「裏切られた」という感情が生じやすく、対応が感情的・強硬的になってしまうことがあります。一方、従業員側も「突然責められた」「話を聞いてもらえなかった」と感じることで対立が深まり、最終的には法的トラブルや訴訟リスクに発展するケースも見受けられます。こうした状況を未然に防ぐため、社会保険労務士が重視するのが、“誤解と対立を生まないコミュニケーション設計”です。
まず最も重要なのは、初動対応の場面設計です。経歴に疑義が生じたからといって、いきなり上司や人事担当者が詰問するような場を設けてしまうと、防衛反応を引き起こし、事実確認すら困難になります。あくまで冷静かつ中立的な立場で、事実確認の一環として面談を設定することが望ましいです。実際に関与する現場では、「確認をさせていただく場」として面談趣旨を事前に文書で通知し、本人の心理的な防御壁を下げる工夫をしています。
また、面談時には、質問の仕方にも配慮することが必要です。「なぜ嘘をついたのか」と責めるのではなく、「この記載内容と違いが見られるが、何か事情があったのか」といったように、説明の機会を与える姿勢が、対立を防ぐポイントです。社労士が同席することで、会話が一方通行にならず、冷静な進行が保たれるメリットもあります。
次に、記録の透明性と共有も、信頼関係を損なわないうえで重要です。面談の要点や確認事項は、その場で簡潔に記録を取り、後日本人にも開示することで、「言った・言わない」や「一方的に決めつけられた」といった不信を防ぎます。また、話し合いの中で“改善の余地”があると判断される場合には、配置転換や研修を提案するなど、一律の処分ありきではない柔軟な選択肢も用意します。
さらに、説明のタイミングと範囲にも注意が必要です。感情的な摩擦を防ぐには、社内の関係者に対する情報共有も“必要最小限”とし、プライバシーや名誉への配慮を徹底します。むやみに噂が広がると、事案が沈静化する前に職場の信頼が損なわれかねません。
採用トラブルへの対応は、単なる事務処理ではなく、「感情と事実をどう整えるか」の調整業務でもあります。だからこそ、社労士は“対立を生まない設計者”として、企業と従業員の間に冷静なコミュニケーションの場を整える支援を行うのです。
まとめと結論(採用は「入口」から仕組みで守る)
経歴詐称の問題は、発覚時の対応が注目されがちですが、根本的な予防策は“採用の入口設計”にあります。企業にとって採用は、単に人材を確保する手続きではなく、「将来の信頼関係を築く初期契約行為」であり、その段階から制度的な備えを講じることが、後のトラブル予防とリスク管理の要となります。
多くの企業では、採用の現場において「履歴書や経歴の確認は形式的に」「面接の印象で判断」といった属人的・感覚的な選考が未だに多く見られます。これは、経歴詐称や誤情報に気づけない土壌を企業自らが作っているとも言えます。だからこそ、社会保険労務士として提案しているのが、「確認・記録・説明」の三位一体の仕組み化です。
まず、経歴や資格情報の確認体制を制度化することで、採否判断の客観性と正当性が保たれます。次に、採用過程の記録をしっかりと残すことで、万が一のトラブル時に企業の対応履歴を示す証拠となります。そして、内定通知や誓約書を通じて、経歴に関する虚偽記載が判明した場合の対応方針を明示し、企業の姿勢を応募者に伝えることで、リスクの“抑止力”としても機能します。
さらに、万一の発覚時にも、冷静に手順を踏んで対応することが極めて重要です。感情的に解雇を言い渡したり、誤った手続きで内定を取り消したりすると、かえって企業が不利な立場に立たされることになります。就業規則や雇用契約書との整合性、本人からの聴取、懲戒理由の妥当性など、法的観点をふまえた“出口設計”も不可欠です。
これら一連の対応を企業単独で行うには限界があります。だからこそ、採用からトラブル対応まで一貫して支援できる社会保険労務士の関与が、リスクの軽減とスムーズな制度運用に大きく寄与します。
採用は、企業の価値と信頼を守る最初の接点です。その信頼関係を築くためにも、制度と手順を整えた「仕組みで守る採用体制」が、今後の企業経営には不可欠と言えるでしょう。
社会保険労務士に相談するメリットとサポート内容(全国対応可能)
経歴詐称や内定取り消しといった採用トラブルは、企業にとって法的・ reputational なリスクを伴う重大な課題です。その対応を一歩間違えると、労働審判・訴訟・SNSでの炎上など、想定以上のダメージに発展しかねません。こうした場面で、冷静かつ実務的に支援できる専門家が、社会保険労務士(社労士)です。
まず、社労士の最大の強みは、「法令と現場実務の橋渡しができること」です。就業規則の整備や採用書類の作成といった制度設計だけでなく、実際の面談対応・記録の取り方・手続きの順序といった実務レベルのサポートが可能です。高山社労士のような実務経験豊富な専門家であれば、企業の現場事情に即した「現実的かつ防御力のある対応策」を一緒に考えることができます。
たとえば、経歴詐称が疑われた場合でも、いきなり解雇や内定取消しに踏み切るのではなく、「事実確認の進め方」「本人への聞き取り手順」「懲戒処分や契約解除の妥当性」といった観点から、企業が不利にならないように“出口設計”をアドバイスします。あわせて、就業規則や採用誓約書などの文言が実態に沿っているかもチェックし、必要な修正を提案します。
さらに、採用段階での予防的支援も社労士の得意分野です。「確認・記録・説明」の三位一体運用を仕組み化することで、トラブルそのものを未然に防ぎます。具体的には、応募書類の確認様式の整備、内定通知書の文言精査、面接記録のテンプレート化、経歴詐称時の対応方針の明文化など、実務に根ざした支援を受けることができます。
高山社労士事務所では、オンラインでの打ち合わせや書類共有にも柔軟に対応しており、全国どこからでもサポートを受けることが可能です。遠隔地の企業や複数拠点を持つ事業体にとっても、ブレのない労務管理体制を整えるための心強いパートナーとなります。
採用は企業の未来を左右する重要な入り口です。だからこそ、不測のトラブルにも対応できる制度と体制を、社労士とともに構築することが、今の時代の賢いリスクマネジメントなのです。
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