作成日：2025/11/21
社労士が提案する「攻めの就業規則」とは何か？
従来型の就業規則では対応しきれない時代の変化と課題
かつての就業規則は、「会社を守るためのルールブック」として整備されることが一般的でした。法令順守の観点から最低限の条文を用意し、トラブルが起きた時に備える“守り”の役割が主だったといえるでしょう。しかし、社会や働き方が大きく変化する現代において、従来型の就業規則では、もはや組織を守りきれない、さらには経営の足かせになることすらあるというのが、私の実感です。
例えば、リモートワークや副業・兼業といった柔軟な働き方が広がる中で、「勤務場所は会社指定の事業所とする」といった旧来の規定では対応できません。就業時間の定義も、フレックスタイム制や裁量労働制といった多様な労働形態に合わせて柔軟に定めなければ、制度の実態とルールが食い違い、結果として労使トラブルの原因となってしまいます。
また、Z世代と呼ばれる新しい世代の労働観も変化の要因です。給与や安定性以上に「働きやすさ」「自己実現」「公正な評価」を重視する傾向が強く、これらに制度としてどう応えるかが企業に問われています。にもかかわらず、未だに「賞与は会社が必要と認めた場合に限り支給する」「評価基準は会社が決定する」などの曖昧な文言を残したままの就業規則では、社員の信頼を得るどころか、不満や誤解を招きかねません。
さらに、SNSや生成AIなど、新しいテクノロジーが業務に入り込むことで、「情報管理」や「成果の帰属」といった論点も急速に複雑化しています。これに対し、10年前に作った就業規則をそのまま使っているという企業も少なくなく、「まさかその条文が今、法的リスクになるとは思ってもいなかった」という相談が私の元には後を絶ちません。
現場では、「就業規則はあるけれど、誰も読んでいない」「運用に活かされていない」というケースも多く見られます。これは、ルールが“会社のための形式的な文書”になってしまっている証拠です。本来、就業規則は会社と社員が信頼関係を築き、企業のビジョンを共有しながら成長していくための“経営の土台”であるべきなのです。
だからこそ、これからの時代に求められるのは、「守るため」だけでなく「育てる・伸ばす」ための就業規則。いわば“攻めの就業規則”へのアップデートが、企業の競争力を支えるカギとなっていくのです。続いて、この「攻めの就業規則」が具体的にどのようなものか、そしてなぜ今必要とされているのかを、社会保険労務士の視点から詳しく解説していきます。
「攻めの就業規則」とは何か？その概念と必要性
社会保険労務士が現場で感じる“守りの限界”と“攻めの意義”
就業規則というと、多くの経営者は「会社を守るためのもの」「万が一のトラブル時に使うもの」と認識されています。確かに、法令に従い、懲戒処分や服務規律を整備しておくことは、組織としてのリスク管理において不可欠です。しかし、私が社労士として多くの現場に関わる中で痛感しているのは、こうした“守りのための就業規則”だけでは、変化の激しい今の時代を乗り切るのは難しい、という厳しい現実です。
たとえば、問題社員への対応を想定して、懲戒規定や服務違反の条項ばかりが強化された就業規則があります。これでは、いざという時の防波堤にはなるかもしれませんが、優秀な社員が「この会社は管理ばかりで、自分たちの働き方には関心がない」と感じてしまい、モチベーションの低下や離職につながる可能性があります。つまり、“守り”の強化が、別の意味でのリスクを生んでしまっているのです。
一方で、企業が変化の波を乗り越え、成長を遂げている現場では、「就業規則を経営ツールとして活用している」という共通点があります。採用時に会社の価値観を伝える手段として、あるいは社員のキャリア形成や働きやすさを制度として支援するために就業規則を整備し、社内外に“企業の姿勢”を発信しているのです。これが、私が提唱する「攻めの就業規則」の考え方です。
攻めの就業規則とは、単なる法令対応を超えて、「社員の行動を促す」「会社の方針を浸透させる」「競争力を高める」ための能動的な制度設計です。例えば、「柔軟な働き方の制度を具体的に明記する」「副業の条件を整理し、自己実現を支援する」「評価制度や処遇のルールを見える化する」といった条文がこれにあたります。こうした制度を明文化することで、社員の納得感が高まり、組織の一体感も育まれていきます。
実際に私がサポートしたある企業では、「子育て社員が働きやすい制度」を就業規則に明文化したところ、求人応募者の質が向上し、従業員満足度も高まったという成果が出ています。これはまさに、制度が“攻め”の武器になった好例です。
“守るだけ”の制度では、時代に取り残される――これは決して大げさな話ではありません。働き方の多様化、法改正の頻度の増加、価値観の変化。こうした流れの中で、企業が信頼と魅力を保ち続けるには、「未来を見据えた制度設計」が不可欠です。社会保険労務士は、その最前線で企業の“変わる勇気”を制度として形にし、経営者とともに前に進む存在でありたいと考えています。
「守る就業規則」から「育て、導く就業規則」へ。今こそ、攻めの姿勢で制度を見直すときです。
攻めの就業規則で実現できる経営的メリット
採用力・定着率・評価制度との連動による効果
就業規則というと、どうしても「社内のルールブック」というイメージが先行しがちですが、実は“攻めの就業規則”は、採用力・定着率・人事評価といった企業の根幹にも密接に関わっています。制度を単なる社内管理の道具としてではなく、「経営戦略の一部」として機能させることで、企業の魅力が外にも内にも伝わり、人材面での成果が目に見えて現れるのです。
まず注目すべきは「採用力」への効果です。現在、求職者の多くは、企業のホームページや採用情報ページだけでなく、就業規則や社内制度にまで目を通す傾向があります。特に若年層は、「どんな働き方ができるのか」「副業やリモートワークは認められるのか」「休暇制度は整っているか」など、ライフスタイルと価値観に合った企業を選ぼうとします。そんな時、“柔軟な働き方”“明確なキャリアパス”“多様な評価制度”がしっかり就業規則に盛り込まれていれば、それ自体が企業のアピール材料となり、他社との差別化につながるのです。
実際、私が支援したあるIT企業では、フレックスタイム制・リモートワーク・副業容認などを明文化した就業規則を整備し、その一部を採用サイトに掲載したところ、求職者から「制度が明確で安心できた」「働き方の柔軟性に惹かれた」という声が多く寄せられ、採用の応募数・質ともに向上しました。これがまさに、攻めの就業規則が持つ“対外的効果”の具体例です。
次に「定着率」への影響について。従業員の離職理由の上位には、制度への不満や評価の不透明さがあります。つまり、「なぜ昇給したのか、しなかったのかが分からない」「自分の頑張りが反映されていない気がする」といった不信感が、モチベーションを下げ、退職という選択につながるのです。こうした問題は、就業規則や人事制度において“評価のルール”を明文化し、運用とセットで従業員に示すことで、大幅に改善されます。
私が関わった製造業の企業では、「昇給・賞与の基準」「能力評価と職能ランク制度の関係性」などを就業規則にしっかり盛り込み、社内説明会も実施しました。その結果、社員から「評価基準がはっきりして安心した」「納得できるから頑張ろうと思える」といった声があがり、実際に離職率が改善したという成果につながりました。
最後に「評価制度との連動」です。評価制度を単独で運用しても、就業規則に明記されていなければ、法的な整合性に欠け、トラブルの原因になります。たとえば、成果主義で賞与を変動させたい場合でも、その根拠が就業規則に記載されていなければ、後に従業員から異議を唱えられる可能性があります。“攻めの就業規則”では、評価項目・評価の反映方法・処遇との関連性までを条文化することで、制度全体の一貫性と透明性を高めることができます。
就業規則は、単なる社内文書ではなく、“企業の価値を伝えるメッセージツール”でもあります。採用から定着、評価までをつなぐ軸として機能させることで、人が集まり、人が育ち、人が辞めない組織へと進化する。これこそが、社労士が提案する「攻めの就業規則」の真価なのです。
攻めの就業規則に含めるべき具体項目と設計ポイント
社労士視点で見る注目の条文例とトレンド
「就業規則は最低限の義務を満たしていれば十分」――かつてはそう考える経営者も少なくありませんでした。しかし、時代は大きく変わり、今や就業規則は企業の魅力や方針、柔軟性を伝える“メッセージ”そのものとなっています。社労士として現場に携わる中で、企業が今押さえておくべき「注目の条文」や「制度設計のトレンド」は、確実に進化しています。以下に、近年多くの企業が取り入れ始めている条文の実例とその背景をご紹介します。
まず注目すべきは「副業・兼業に関する条文」です。働き方改革実行計画に基づき、厚生労働省がモデル就業規則で副業・兼業を認める方向に舵を切ったことで、「原則禁止」から「条件付き許可」へと見直す企業が急増しています。具体的には、「会社の業務に支障を及ぼさない範囲で副業を認める」「事前申請と承認を義務付ける」といった内容が主流です。副業を明確に認めることで、社員のスキルアップや自己実現を支援する姿勢が示され、採用力・エンゲージメントの向上につながります。
次に「リモートワーク・在宅勤務」に関する条文も外せません。コロナ禍を機に一気に普及した働き方ですが、制度化が曖昧なまま継続されている企業も少なくありません。そこで重要なのが、就業規則に「在宅勤務制度の適用対象者」「業務遂行のルール」「勤怠管理の方法」「会社負担の範囲（通信費・光熱費等）」などを明記することです。トラブル防止はもちろん、制度として明文化することで従業員の安心感も高まります。
また、最近のトレンドとして「メンタルヘルスケア」や「ハラスメント防止」に関する規定強化も顕著です。たとえば、産業医との面談制度やストレスチェック後の対応手順、パワハラ・セクハラが起きた場合の社内対応ルールなどを詳細に規定する企業が増えています。こうした内容を盛り込むことで、安心して働ける環境づくりへの企業の姿勢を明確に示すことができ、従業員満足度の向上やリスクマネジメントにも直結します。
さらに、「評価制度とのリンク」も今後の重要な視点です。昇給・賞与・人事考課に関するルールを就業規則に落とし込むことで、評価の透明性と納得感を生み、職場の信頼関係が強まります。例として、「等級制度」「目標設定とフィードバックのサイクル」「評価項目と処遇の関係性」などを記載し、評価に対するルールを明文化する企業が増加中です。
このような“攻めの条文”を設ける際に大切なのは、単なる「流行の追従」ではなく、自社の文化・方針・現場の実態に合った形で設計・表現することです。テンプレートをコピーしただけでは、社員の共感を得ることはできません。だからこそ、制度設計の段階から社労士が関与し、「その会社ならでは」の就業規則を構築することが不可欠なのです。
時代に適応するために、就業規則もまた“アップデート”が必要です。それは企業がこれからの働き方に真剣に向き合い、社員とともに成長するための第一歩なのです。
制度運用で失敗しないための注意点と成功事例
社会保険労務士による支援で制度が活きる理由
就業規則を整備したからといって、それだけで組織が変わるわけではありません。重要なのは、「制度を機能させ、現場で活かすこと」です。そのために不可欠なのが、制度の設計から運用、改善に至るまでを一貫して支援できる専門家、すなわち社会保険労務士の存在です。
私が現場で感じるのは、「作った就業規則が社内に浸透していない」「運用がうまくいかず、社員との間に齟齬が生まれている」といった悩みが非常に多いことです。これは、条文が形式的であったり、実態と乖離していたり、制度の説明が不足していたりすることに起因します。つまり、「就業規則を作ること」と「制度を動かすこと」の間には、実は大きなギャップが存在するのです。
このギャップを埋めるのが、社会保険労務士の大きな役割です。社労士は単に法律の知識があるだけではありません。企業の文化や経営課題、社員との関係性など、現場のリアリティを理解した上で制度を設計・翻訳し、それが実際に現場でどう運用されるかまでを見据えて支援します。
たとえば私の場合、就業規則の作成後には「制度説明会」や「管理職向けの運用研修」を提案しています。社員にとって制度が「他人事」ではなく「自分の働き方と関わるもの」として理解されるよう、具体的な言葉で丁寧に伝える工夫を欠かしません。また、管理者が制度を適切に使えるよう、「判断の基準」や「対応の手順」を研修で共有することも、制度定着には欠かせません。
さらに、社内からの制度に関する質問や誤解を受け止め、運用途中での見直しをサポートするのも社労士の仕事です。制度というのは導入して終わりではなく、使いながら育てていくもの。現場からのフィードバックをもとに、柔軟に改善していくことで、本当に使える制度へと進化させることができます。
私が特に意識しているのは、「経営者の想いを制度に翻訳する」という視点です。制度は社員のためだけでなく、経営者の経営方針や理念を形にするツールでもあります。「こういう組織にしたい」「こういう働き方をしてほしい」といった思いを、就業規則や人事制度という“見える形”で示すことで、社員にも伝わり、行動に変化が生まれるのです。
このように、社会保険労務士が関与することで、制度は単なる「ルール」から「経営を支える仕組み」へと昇華します。形式だけでなく中身にこだわり、運用まで視野に入れて支援することで、制度は本当の意味で“活きたもの”となるのです。
だからこそ、「制度を見直したい」「社員との関係をより良くしたい」と思ったときこそ、社労士にご相談いただきたい。経営と人をつなぎ、制度を未来に向けた武器へと変えるお手伝いを、私たちは全力で行ってまいります。
まとめと結論（これからの就業規則は「経営ツール」）
これまで、就業規則は「会社を守るための規定集」「法律対応のための文書」として捉えられてきました。もちろん、最低限の法令順守は企業としての責務ですが、それだけで終わらせるのはあまりにももったいない。今の時代、就業規則は“経営ツール”として捉えるべきフェーズに入っています。
経営者の皆さまにこそお伝えしたいのは、就業規則は“守り”の道具であると同時に、“攻め”の戦略にもなり得るということです。採用力を高める、社員の定着を促す、公正な評価でやる気を引き出す――これらはすべて、適切な制度設計によって実現できることです。そしてその中核にあるのが、実は就業規則なのです。
現代の労務環境は、法改正・価値観の多様化・働き方の変化などにより、企業が求められる制度対応も年々複雑化しています。副業の解禁、リモートワーク、フレックスタイム制、ハラスメント対策、メンタルヘルスケア…。こうした要素を、企業理念と照らし合わせながら、現場で運用できるルールに落とし込む作業は、一朝一夕でできることではありません。
だからこそ、就業規則を単なる「作る」から「育てる」ものへと位置づけ、継続的に見直していくことが重要です。そしてそのプロセスに、社会保険労務士という“制度の翻訳者”が関わることで、はじめて制度は活きたものになります。
私自身、これまで数多くの企業支援を通じて感じているのは、「就業規則を見直しただけで、社内が変わる」瞬間が確かにあるということです。評価制度とリンクさせたことで社員が目標に向かって動き始めた、柔軟な働き方を制度化したことで離職が減った、制度説明会を通じて経営方針が現場に伝わった…。こうした変化は、どれも“制度が経営と人をつないだ結果”に他なりません。
そして何より、「制度を整えること」が経営者自身の安心につながります。これまで感覚で判断してきた処遇や勤務管理を、ルール化して組織に浸透させることで、業務が属人化せず、責任の所在も明確になります。これは、組織を次のステージへ導くための基盤づくりとも言えるでしょう。
これからの就業規則は、経営戦略の一部です。社内外に企業の価値観や方向性を示し、働く人々に安心と納得を与える存在。そして、変化に強い組織をつくるための“設計図”でもあります。社労士と共に、その設計図をアップデートし続けることで、企業はよりしなやかに、強く成長していけるのです。
「就業規則はうちにとって本当に合っているのか？」「制度が現場で機能していない気がする」――そんな気づきがあるときこそ、攻めの制度づくりのスタート地点です。時代の変化を味方につける制度設計を、今こそ始めてみませんか？
社会保険労務士に相談するメリットとサポート内容（全国対応可能）
「就業規則を見直したいけれど、どこから手をつければいいか分からない」「法改正が多すぎて、制度が古くなっている気がする」「社員に制度をうまく説明できない」――こうした声は、経営者の皆さまから日々聞こえてくる“本音”です。そして、そうした悩みに真っ先に応えられるのが、社会保険労務士（社労士）という存在です。
社労士は、人事労務に関する国家資格者であり、就業規則・人事制度の設計から運用・見直しまでを一貫してサポートできる専門家です。ただ法令を守るためだけではなく、企業の経営方針や組織風土に合わせて、現場で使える制度づくりを実現できる点が最大の強みです。
たとえば私は、全国の中小企業を対象に、就業規則の戦略的見直し・人事制度の構築・評価制度の導入・リモートワークや副業制度の整備など、時代に対応した制度構築を支援してきました。その際に重視しているのは、「経営者の想いを制度に翻訳すること」と「現場が混乱しないように丁寧に制度を落とし込むこと」です。
ご相談いただければ、以下のようなサポートが可能です。
・「攻めの就業規則」による経営戦略への制度組み込み
・会社独自の文化・方針に沿ったオリジナル規定の作成
全国対応についても、Zoomやクラウドツールを活用することで、地域を問わず円滑なサポートが可能です。北海道から九州まで、オンラインで継続支援を行っている企業様も多数あり、必要に応じて現地訪問も対応いたします。物理的な距離ではなく、“組織に伴走できるかどうか”が、私の支援スタイルの軸です。
また、制度をただ作るだけでなく、「制度をどう伝えるか」「どう運用に落とし込むか」まで支援できるのも、社労士を活用する大きなメリットです。制度は作って終わりではなく、“活きてこそ価値がある”――それを実現するために、経営者の隣でともに考え、形にしていくのが私たち社労士の仕事です。
これからの時代、制度は経営における「競争力」の一部となります。人が集まり、育ち、辞めずに活躍できる組織を目指すなら、今こそ制度づくりを見直す絶好のタイミングです。どうか、就業規則や制度整備に少しでも不安や疑問があるなら、お気軽にご相談ください。経営者の想いを形にする制度設計を、全国どこからでも、全力でサポートいたします。
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