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作成日:2025/11/11
「残業代込み給与」が原因で未払いと認定された労務トラブルの実例

テーマの背景と読者の悩み(実際の労務トラブル事例を交えて)

企業の成長には、従業員の力が欠かせません。そして、その従業員の力を最大限に引き出すためには、公正で明確な労務管理が必要です。ところが、実際の現場では「残業代込み給与」という一見便利な賃金体系が、重大な労務トラブルを引き起こすことがあります。
「残業代込みで30万円支給」――このような表現は、中小企業を中心に現場でよく見かける給与体系です。経営者の立場からすれば、シンプルで運用しやすく、管理工数も減るため魅力的に映ることでしょう。実際、私自身もこれまでに数多くの経営者の方から「このやり方で何が問題になるのか?」といった相談を受けてきました。
しかし、この「込み込み方式」は、法的には極めてリスクの高い運用となる可能性があります。実際に、従業員からの申告をきっかけに労働基準監督署の調査が入り、「未払い残業代」として過去に遡って多額の支払いを命じられた企業の事例も存在します。経営者の「善意でやっていた」「そう指導されたと思っていた」という主張が通らないのが、労働法の厳しさでもあります。
私は社労士として20年以上、4万件を超える労務相談を受けてきましたが、その中でもこの「残業代込み給与」に起因するトラブルは後を絶ちません。しかも、相談に訪れる経営者の多くが「まさか自分の会社が」と驚かれるのです。これは決して経営者の怠慢や悪意ではなく、制度の複雑さや、実務の中で埋もれてしまったリスクへの「気づきの遅れ」が原因です。
経営者の皆さんは、日々多くの課題を抱えておられます。会社の成長戦略、コスト管理、社員のモチベーション維持――その中で、労務管理の細かな部分まで手が回らないという声もよく耳にします。そのお気持ちは、私も痛いほど理解しています。しかしだからこそ、社労士として、経営者の皆さまの「経営の伴走者」として、リスクの芽を早期に摘むお手伝いをしたいと強く感じています。
本記事では、実際に「残業代込み給与」が原因で未払いと認定された労務トラブルの事例を紹介しながら、なぜこのような事態が起きるのか、どうすれば未然に防げるのかを、社会保険労務士としての視点でわかりやすく解説していきます。経営者の皆さまが安心して事業に集中できるよう、少しでもお役に立てれば幸いです。

「残業代込み給与」が原因で起こる労務トラブルの実態

社会保険労務士の視点で見る典型的なトラブル例

私のもとには、年間数百件の労務相談が寄せられますが、「残業代込み給与」に関するご相談は特に根深く、また誤解されやすいテーマの一つです。多くの中小企業では、社員との信頼関係を重視するあまり、「お互い納得しているから問題ない」と判断してしまいがちです。しかし、これは労働法上は非常に危険な判断となります。
例えば、ある製造業の企業では、従業員全員に「基本給+残業代込みの固定給」として月額30万円を支給していました。経営者としては「これ以上払えないラインだし、事前に説明もして合意も得ている」と自信を持っておられました。ところが、ある日、退職した社員から「固定給とは別に残業代が支払われるべきだ」として労働基準監督署に申告があり、調査が入ったのです。
このケースでは、賃金明細上、どの金額が基本給で、どれが残業代に相当するのか明確に区分されていなかったことが致命的でした。さらに、就業規則や雇用契約書においても、残業代に関する明示がなされておらず、実態として何時間分の残業が含まれているのか不明確な状態だったのです。結果として、「実際の残業時間と支払われた賃金が一致していない」と判断され、2年分遡って数百万円の未払い残業代を支払うこととなりました。
ここでポイントとなるのは、たとえ従業員が合意していたとしても、「法的に妥当かどうか」は全く別の問題であるという点です。社会保険労務士として私が現場で繰り返し感じるのは、経営者の皆さまが「リスクを知らないまま、慣習として運用してしまっている」ことの怖さです。
また別の事例では、飲食業の会社で、社員が深夜まで働くにもかかわらず「固定残業代40時間分込み」として給与を一律支給していたケースがありました。深夜割増や法定休日の勤務に対する割増賃金が考慮されておらず、最終的に弁護士を通じて訴訟にまで発展。経営者は「善意でやっていたつもりだった」と肩を落とされていましたが、制度の設計と運用のズレが命取りになったのです。
このようなトラブルを未然に防ぐには、制度の「見せ方」と「書き方」が極めて重要です。就業規則、雇用契約書、賃金明細のすべてに一貫性を持たせ、法的要件を満たす必要があります。そして何より、制度が適切に運用されているかを定期的に確認することも欠かせません。
経営者の皆さまが本業に集中できるよう、我々社労士が寄り添い、制度設計から実務運用、トラブル発生時の対応まで一貫してサポートできる体制を整えること。それが、私の使命だと考えています。

「残業代込み給与」が未払いと認定される主な理由

判例・行政指導に基づく判断基準と実務への影響

「残業代込み給与」に関する労務トラブルは、実は単なる誤解や運用ミスにとどまらず、明確な法的判断基準のもとで「未払い」と認定されることがあります。その基準を知るには、過去の判例と厚生労働省の行政指導の内容を理解することが不可欠です。
まず代表的な判例として挙げられるのが、東京地裁平成22年12月24日判決(美容業界の事例)です。このケースでは、「固定残業代を含む」とされていた月給制に対し、裁判所は「実際の残業時間に応じた支払いがなされておらず、賃金の明確性に欠ける」として、固定残業代の無効を認定しました。つまり、仮に「〇〇時間分の残業代を含む」と明記していたとしても、それが合理的な根拠に基づき、かつ明確に区分されていなければ、法的には「全額が基本給」と見なされるリスクがあるのです。
行政の指導でも同様です。厚生労働省が示すガイドラインでは、固定残業代制度を導入する際には以下の要件が必要とされています。
1. 賃金規程等において、固定残業代の時間数と金額が明確に記載されていること
2. 実際の労働時間が固定残業時間を超過した場合、超過分については別途支払うこと
3. 賃金明細などで、基本給と固定残業代が明確に分けて表示されていること
これらが満たされていない場合、たとえ「込み込み」であっても、固定残業代部分は無効とされ、全額が基本給として評価され、残業代の二重払いを命じられる可能性があります。
こうした判例や行政指導は、我々社会保険労務士が現場で制度設計を行う際に、最も重視するポイントです。企業としては、「従業員と合意している」「現場で問題は起きていない」と思っていても、いざ外部機関のチェックが入った際には、書面と運用の整合性、そして法的要件を満たしているかが厳しく問われるのです。
私はこれまでの実務の中で、多くの企業でこの「制度と運用のズレ」を見てきました。経営者の方々にとっては、「そんな細かい部分まで見られるのか」と驚かれることもありますが、これが現実です。だからこそ、制度設計の段階から「第三者に見られても通用する内容になっているか」を意識することが重要です。
実務的には、雇用契約書・賃金規程・賃金台帳をセットで見直すこと、そして従業員にも丁寧に説明し、記録を残しておくことが、トラブル予防につながります。経営者の皆さまが自社のビジョンに集中できるよう、法的リスクのない労務体制を整えること――それが、私たち社労士が果たすべき最大の役割だと感じています。

労務トラブルを防ぐために企業が取るべき対応策

社会保険労務士による就業規則・賃金制度の見直し提案

「残業代込み給与」が引き起こす労務トラブルの多くは、就業規則や賃金制度における“曖昧さ”に起因しています。経営者の皆さまと話をしていて感じるのは、「制度を整えたい気持ちはあるが、何をどう直せばいいのか分からない」という戸惑いです。これは当然のことです。なぜなら、労働法は複雑で、毎年のように法改正が行われる分野であり、専門知識と最新情報の把握が必要不可欠だからです。
我々社会保険労務士の役割は、経営者の皆さまのそうした「分からない」を解消し、トラブルの芽を事前に摘み取ることです。具体的な見直しの第一歩は、就業規則と賃金規程の整合性をチェックすることから始まります。例えば、固定残業代制度を導入しているにもかかわらず、就業規則や雇用契約書にその具体的な定義や時間数が明記されていないケースは、実務でも非常に多く見受けられます。
このような場合には、「固定残業代は月〇〇時間分、△△円を支給する。これを超える時間外労働には、別途残業代を支給する」など、誰が見ても一目で内容が分かるように明記する必要があります。そしてその情報は、就業規則、雇用契約書、賃金明細にすべて一貫して記載されていなければなりません。
また、実務上の運用ルールも見直しが必要です。例えば、社員の勤務時間が実際に固定残業時間を超えている場合、その超過分が適切に支払われているかを定期的にチェックする仕組みが必要です。これには、勤怠管理システムの活用や、月次の労働時間レビュー体制の構築が効果的です。
私自身がサポートさせていただく際には、制度の「設計」だけでなく、「運用」の部分まで踏み込みます。なぜなら、どれだけ立派な規程を作っても、現場で正しく運用されなければ意味がないからです。そして、現場の実情を把握しているのは経営者や現場責任者の皆さまです。だからこそ、ヒアリングを丁寧に重ね、経営の方針や企業文化と整合性の取れた制度を構築することが重要だと考えています。
さらに、制度を見直すことで得られるメリットは「リスク回避」だけではありません。社員にとっても「この会社はちゃんとルールを整備している」という安心感につながり、定着率やモチベーションの向上にも寄与します。つまり、労務管理の整備は単なるコストではなく、経営戦略の一部としてとらえるべき時代なのです。
社労士として、私は「経営者の想い」と「法律」との橋渡し役でありたいと考えています。法律を盾にするのではなく、実態に即した“現場で活きる制度”を一緒に作っていく。それが、経営者の皆さまに寄り添う社労士の本来の役割であり、私の信念です。

「残業代込み給与」をめぐる誤解と実務上の注意点

社会保険労務士によるよくある相談とその対処法

「これって本当に残業代を払わなきゃいけないんでしょうか?」――これは私が現場で最も多く受ける質問の一つです。中小企業の経営者から寄せられるご相談の多くは、法律の解釈よりも、実務上「どうすればいいのか分からない」という戸惑いが中心です。特に、「残業代込み給与」の運用に関しては、一定の誤解が浸透しているケースが多く、制度が複雑であるがゆえに、善意で導入した仕組みがトラブルの原因となってしまうことも珍しくありません。
典型的な相談例としては、「固定残業代を導入しているが、どこまで払えばいいのか」「給与明細に残業代を分けて書いていないけど問題になるのか」「退職時に残業代の精算を求められたが、どう対応すればよいのか」といったものが挙げられます。これらの相談に対し、私はまず“ルールの確認”と“事実の整理”から始めることを徹底しています。
ルールの確認とは、就業規則や雇用契約書、給与規定がどのように定められているかを確認することです。そして、事実の整理では、実際に従業員がどれだけ働いていたのか、その時間に見合った賃金が支払われていたのかを、勤怠記録や賃金台帳をもとに確認します。この「法と現場のズレ」を発見することが、問題の本質にたどり着く第一歩です。
また、経営者の心理的な負担にも配慮するよう心がけています。相談に訪れる方の多くは、「悪気はなかった」「法律のことは専門家に任せたい」と口をそろえておっしゃいます。その気持ちは痛いほどわかります。私自身も、開業当初は制度の複雑さに戸惑った経験がありますし、誰だって最初から完璧な経営はできません。
そのうえで、具体的な対処法としては、以下のような流れをとることが多いです。
1. 固定残業代制度の要件確認と、就業規則・雇用契約書の整備
2. 賃金明細の表記方法の改善(残業代を明確に分ける)
3. 勤怠管理の仕組みの見直しと、定期的なチェック体制の構築
4. 過去の労働時間と支給実績の突合によるリスク評価と精算方針の決定
5. 従業員への説明と同意の取得(誤解や不信感を防ぐための対話)
こうした対処を丁寧に積み重ねていくことで、制度の見直しはもちろん、社内の信頼関係も再構築することができます。特に経営者ご自身が正面から労務課題と向き合う姿勢を見せることで、社員の安心感や企業イメージの向上にもつながります。
私のスタンスは常に「問題の指摘ではなく、解決の提案を」。経営者にとって、社労士は単なる法律の番人ではなく、伴走者であるべきだと考えています。どんなに小さな疑問でも、安心して相談できる関係性こそが、労務トラブルの予防と企業の健全な成長につながると信じています。

まとめと結論(未払いトラブルを防ぐために必要な視点)

「残業代込み給与」という制度は、一見するとシンプルで運用しやすく、コスト管理にも有効な手段に見えるかもしれません。しかし、その裏には法的リスクが潜んでおり、誤った理解や運用によって未払いと認定される可能性があることを、ここまでの内容でお伝えしてきました。
実際に多くの企業で起こっているのは、「つもり運用」です。つまり、「このやり方で問題ないと思っていた」「前からこうやってきたから大丈夫」という感覚で制度を回していたが、実は法的には不備があった、というケースです。そしてそれが、ある日突然、退職者や内部通報、監督署の調査によって明るみに出て、過去に遡って数百万円単位の残業代支払いを求められるという、経営に大きな影響を与える事態に発展します。
ここで重要なのは、法律を「怖いもの」と捉えるのではなく、「経営の安全装置」として活用するという視点です。法律を守ることは、従業員との信頼関係を築くための土台であり、ひいては会社のブランド価値を高め、優秀な人材の定着や採用にもつながります。つまり、労務管理の健全化は単なるリスク対策ではなく、経営戦略の一環として考えるべきなのです。
そのためには、まず「見える化」が必要です。就業規則や雇用契約書、賃金規程を、誰が見ても明確で一貫性のある内容に整えること。そして、実際の運用がそれらに則っているかを定期的に確認すること。このプロセスこそが、未払いトラブルの最も確実な予防策です。
もちろん、経営者の皆さまが日々多忙な中で、労務の細部にまで気を配るのは簡単なことではありません。その役割を担うのが、我々社会保険労務士です。私はこれまで4万件以上の相談対応を通じて、制度の設計からトラブル解決、社員説明までを一貫してサポートしてきました。大切なのは「不安があるうちに相談する」こと。問題が顕在化してからでは、対応に倍以上のエネルギーとコストがかかってしまいます。
未払いトラブルを防ぐために必要なのは、「気づき」「整備」「継続的な見直し」、そして「経営者の意思決定を支える専門家の伴走」です。会社を守るために、そして働く人を守るために、今一度、自社の賃金制度を見直す機会としていただければ幸いです。
経営は孤独な決断の連続ですが、労務の分野においては、信頼できるパートナーと共に歩むことで、その負担は大きく軽減できます。どうか、一人で抱え込まず、ご相談ください。労務管理を整えることは、企業の未来を整えることと同義です。今がその第一歩です。

社会保険労務士に相談するメリットとサポート内容(全国対応可能)

「社労士に相談するのはトラブルが起きてから」――そんなイメージを持たれている方も、まだ少なくありません。しかし実際には、トラブルが起きる前こそが、社労士の真価が発揮されるタイミングです。特に「残業代込み給与」に代表されるような制度の運用ミスは、事前の確認と整備によって確実に防ぐことができます。では、なぜ社労士に相談することが重要なのか?その答えは、労務の「専門性」と「実践性」の両方を兼ね備えているからです。
私はこれまで20年以上、4万件以上の相談に向き合ってきました。その中で実感しているのは、経営者の多くが「制度を整えたい」という意志を持ちながらも、「何から手をつければよいのか」「どう伝えれば社員が納得してくれるのか」に迷っているという現実です。その迷いに対して、法律と現場をつなぐ“翻訳者”として機能するのが、我々社会保険労務士の役割だと考えています。
たとえば、制度設計においては、就業規則や賃金規程の作成・改定、雇用契約書の整備といった法的な要件を満たす書類作成はもちろん、企業の業種・規模・文化に合わせた“実務に落とし込める制度設計”を行います。加えて、固定残業代制度の導入や見直し、時間外管理ルールの構築、社員説明資料の作成支援まで、必要なプロセスを一貫してサポートいたします。
また、私自身が大切にしているのは、単なる「法律の説明」ではなく、「経営の視点に立った提案」です。経営者が抱えるコスト管理やリスク回避の悩みに共感し、具体的な行動に移せるような提案を行うことをモットーとしています。顧問契約はもちろん、スポットでの相談やセカンドオピニオンとしての対応も可能ですので、柔軟な関わり方をご希望の経営者の皆さまにも安心してご活用いただけます。
さらに、当事務所では全国対応も行っており、オンラインでの面談や書類チェック、勤怠・給与制度の診断など、場所を問わずサポートが可能です。仙台を拠点としていますが、名古屋をはじめ、全国各地からのご相談にも対応しており、地域特性を踏まえたアドバイスも得意としています。
最後にお伝えしたいのは、「社労士に相談することは、経営を前に進める手段の一つである」ということです。問題が起きてから慌てて対応するのではなく、今のうちに“予防と整備”を進めておくことで、経営の安定と社員の信頼を同時に手に入れることができます。
どんなに小さなことでも構いません。「これって大丈夫かな?」「こういう場合はどうしたら?」と感じたときこそ、相談のベストタイミングです。一人で抱え込まず、社労士という専門家の力を、ぜひ経営の安心材料としてご活用ください。
高山社労士事務所
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