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作成日:2025/11/04
問題社員対応を誤ると訴訟リスクに!会社が損をする“3つの落とし穴”

企業に増える“問題社員対応”の悩みと法的リスクとは?

近年、多様な働き方の普及や価値観の変化に伴い、企業が直面する「問題社員」への対応は、かつて以上に複雑化・深刻化しています。遅刻・無断欠勤・業務拒否・ハラスメント行為といった典型的なトラブル行為に加え、リモートワーク中の不適切な働き方、SNS上でのトラブル、働き方改革を前提とした評価制度とのギャップなど、潜在的な問題が年々増加しているのが現状です。こうした“問題社員対応”は、単なる個別の処遇課題ではなく、企業の信頼や法的安定性に直結する重要な経営テーマとなっています。
企業が抱える悩みとしてまず挙げられるのが、「対応すべきかどうかの判断が難しい」という点です。問題行為が断続的であったり、業務に直接的な支障が見えづらかったりする場合、「どこまでが改善指導で、どこからが処分対象か」の線引きが曖昧になりがちです。さらに、処分に向けて注意・指導を重ねたにもかかわらず改善が見られない状況では、「このまま我慢しておくことで他の社員の士気を下げないか」という二次的な悩みも生まれます。加えて、従業員側が管理職の指導を「パワハラ」と捉えるケースが増えており、対応の仕方を誤ると被害者側の主張が会社側に法的リスクをもたらす可能性があります。実際、企業には「ハラスメント等の職場環境義務違反」が損害賠償請求の根拠となる事例が増えています。
次に、企業が見落としがちな法的リスクとして、「不当解雇・無効な懲戒処分のリスク」があります。日本の法律では、従業員を解雇・懲戒処分する際には、就業規則・労働契約・過去の運用実績との整合性が重要です。適切な手続きや説明がなされていなかった場合、裁判所や労働審判において「解雇または懲戒処分は無効」と判断される可能性があります。 特に問題社員対応では、感情的に処分を下してしまったり、指導した記録を残していなかったり、同じような他の社員に対して差異ある扱いをしていたりすると、企業側が不利な立場に立たされるのです。
かつ、企業の「説明責任」や「安全配慮義務」が従業員保護の観点から強化されており、ハラスメントやモラルハザードの問題が生じた場合、企業が被害者側や監督機関から問われるケースが増えています。たとえば、社員間や上司からのハラスメントがあったという申告があった際、企業は速やかに調査・対応を行う義務を負います。これを怠ると、被害社員からの損害賠償請求が認められるリスクもあります。
こうした背景を受けて、問題社員対応は“企業防衛”の観点でも無視できないテーマとなっています。従来は「経営者の裁量」や「現場管理」だけで対応されていた領域が、今では“ルール・手続き・記録”が明確に整備されているかが、企業の法的安定性を左右する分かれ目となっています。たとえば、就業規則に懲戒処分・注意指導・改善計画・面談プロセスが明記されていなかったり、運用実態と乖離していたりすると、企業側の防御材料が弱くなります。
結論として、企業が問題社員に直面したとき、「早期に対応を決めて、適切なルールに基づいて進める」ことが、法的リスクを最小化し、組織の信頼を維持・強化するための鍵です。制度が整っておらず、運用も曖昧なまま放置しておくことは、企業にとって“灯台下暗し”の盲点となり、後から大きな損失につながることを理解しておく必要があります。

“問題社員”とは誰のことか?社労士が見た実態と定義

遅刻常習・業務拒否・職場の空気を乱す行動の実例

企業が「問題社員」と対応を迫られる典型的な行動には、遅刻常習、業務拒否、さらには職場の雰囲気を乱す言動などがあります。こうした言動は単なる“個人的な不満”にとどまらず、組織としての運営や他の従業員のモチベーションに重大な影響を与え、放置すると法的リスクにも発展し得るものです。
まず一つめの実例は「遅刻・無断欠勤の繰り返し」です。例えば、複数回にわたって始業時間に遅刻をしたり、連絡なしに欠勤を行ったりする従業員がいると、上司・同僚がその分の業務を肩代わりする羽目となり、チームの生産性や信頼関係が損なわれます。実務上、こうした勤怠不良型の行動は“問題社員”の典型に挙げられています。また、問題社員対応の観点からも、企業側は「何度注意しても改善が見られない」という履歴を残しておくことが重要です。
次に二つめの実例が「業務拒否・指示無視」です。例えば、上司からの指示に対して「私はその業務をやりたくありません」「他の人がやればいい」と明言して拒む、あるいは通常業務範囲であっても関与を拒むといったケースがあります。こうした態度は、契約上の義務である“誠実に勤務する”という職務の観点からも問題視される可能性があります。企業としては、こうした拒否的態度が組織全体に悪影響を及ぼす前に、改善を促すための指導・注意を記録に残す必要があります。
そして三つめの実例が「職場の空気を乱す行動」です。例えば、他の従業員に対して常に批判的な発言を繰り返す、チームミーティングで意図的に発言を遮る、他者の仕事を妨害するような軽口を頻発するといった行為です。こうした言動は、いわゆる“協調性の欠如”に起因するもので、他のメンバーのモチベーションを低下させ、離職を招く温床となります。実際、問題社員の特徴として「協調性の欠如・勤務態度不良」が挙げられています。さらに、職場の雰囲気が悪化すると、顧客や取引先との関係にも影響が及ぶ場合があり、企業にとって大きな損害となることがあります。
こうした行動が“問題”として扱われる際には、企業側が「なぜこの行動が許容できないのか」「どのような改善指導を行ったのか」といった経緯を証拠化しておくことが不可欠です。例えば、遅刻・欠勤が続いた場合、書面での注意、改善計画の提示、モニタリング期間を設けた上で状況を記録する、といった手続きは重要です。また、職場の雰囲気を乱す行為についても、チームミーティング等で指摘した内容を記録し、対応を定期的に振り返る体制を整えておくべきです。
社会保険労務士として企業支援を行う中で強く感じるのは、これらの“典型例”が少しずつ見過ごされた結果、大きなトラブルに発展しているということです。感情的な対応、記録がないままの処遇、改善機会を設けないままの解雇判断――こうした一連の対応ミスが、後の労働審判や解雇無効の判例を招くわけです。企業としては、早期段階での対応と継続的な運用、記録化という“対応の質”にこそ注力すべきです。
結論として、遅刻常習・業務拒否・職場の空気を乱す行動は、個別の問題として軽視されるべきではなく、組織全体の信頼・秩序に関わる重大な課題です。適切な対応プロセスと記録の構築を、社会保険労務士とともに早めに進めることで、企業は訴訟リスクを低減し、健全な組織運営を実現することができます。

対応を誤るとどうなる?会社が損をする“3つの落とし穴”

落とし穴@ 感情的な指導が「パワハラ」として訴えられる

企業が“問題社員”対応にあたって陥りやすい最初の落とし穴は、「感情的な指導」が結果として労働施策総合推進法(パワハラ防止法)に定める パワーハラスメント(パワハラ) に該当してしまうという点です。指導や注意を行うこと自体は企業にとって必要な管理行為ですが、その方法を誤ると、むしろ企業側が訴訟リスクを抱えることになります。
まずポイントとなるのは、パワハラの法的定義です。同法では、職場において優越的な立場を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、労働者の就業環境が害される行為がパワハラに当たるとされています。「感情的指導」がこの“業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動”と評価されると、単なる指導では済まされず、会社にとって重大な法的問題に発展し得るのです。
具体的には、例えば部下のミスに対して、上司が業務内容を超えて「何をやっているんだ!」「給料泥棒か?」などと大声で叱責を繰り返したり、会議中に個人名を挙げて非難したりしてしまうケースがあります。こうした指導は「感情的である」「目的・手段が不明瞭である」「相手の人格を否定している」という観点から、パワハラに該当するおそれがあります。
また、管理職に求められるのは、部下指導の場面で感情を制御し、事実・改善・将来に向けての行動という「構造的な対話」を行うことです。例えば、部下の成績不振があった際に「どうして出来なかったか」「次にどう改善するか」という具体的な話をするのではなく、怒りの感情のみで叱責することはリスクとなります。加えて、前述のような場面での対応が通報や相談窓口に挙がるケースも増えており、感情的な指導がパワハラの土壌となっているとの指摘もあります。
企業がこの落とし穴を避けるためには、以下の留意点が重要です。
1. 指導の目的を明確にする:ただ怒るのではなく「何を改善してほしいのか」「いつまでにどういう形で」など、改善目標を明示する。
2. 言動の範囲を制限する:感情的な発言、大声、威圧的な態度、周囲を巻き込んだ叱責などを避け、落ち着いた場面・少人数で対話する。
3. 記録を残す:指導・改善状況に関して、日時・内容・面談記録を残すことで、後のトラブル対策となる。
4. 管理職教育を行う:上司・管理職に対し、パワハラと指導の違いや適切な指導スタイルを研修する。
5. 従業員の声に耳を傾ける:「言われた感覚」を軽視せず、従業員が「指導ではなく攻撃された」と感じていないかを定期的に確認する。
社会保険労務士の立場から言えば、感情的な指導は瞬間的には手軽に思えても、企業文化の信頼を損ない、ひいては高額な賠償や解決コストを招く火種になりやすいと実感しています。特に“問題社員”対応という緊迫した場面では、「早く何とかしたい」という焦りから、感情のままに指導してしまうことが多くみられますが、その瞬間が落とし穴の入口となるのです。
企業が本当に守るべきは、「指導をしたから終わり」ではなく、「指導が適正に行われて、組織として健全に機能している」という状態です。感情的な指導を避け、構造化された改善の流れを制度として設けること。それこそが“訴訟リスク”を回避し、健全な職場を守る第一歩となります。

落とし穴A 曖昧な注意・指導記録で解雇無効に

“問題社員”への対応を検討する段階で見落とされがちなのが、「注意・指導記録をきちんと残していない」という落とし穴です。この落とし穴は、最終的に解雇という手段に至った際に、企業が大きな法的リスクを抱える原因となります。つまり、解雇が「形式的には可能に見えても」、指導や改善機会の提供といったプロセスが記録として存在しなければ、裁判所や労働審判で「解雇無効」と判断されかねないのです。
まずポイントとなるのは、解雇という究極の手段を採るためには、企業側に「何をどのように指導して改善を促したか」を証明できる記録が必要という点です。例えば、社員が業績不振・態度不良を理由に解雇された場合、「そもそもどの水準が期待されていたのか」「どのようなミス/欠点を指摘したのか」「何度注意したか」「どのような改善を求めたか」「改善の猶予を与えたか」を時系列で記録しておくことが解雇有効性の鍵となります。
ところが、実務では「口頭で注意した」「面談したと思うが記録を残していない」「指導の頻度や具体性が曖昧」というケースが多く見られます。こうした状態では、万一その社員が退職や解雇後に「理由がはっきりしなかった」「改善の機会を与えられていなかった」と主張した場合、企業側は証明責任を果たせずに不当解雇と判断されるリスクが一気に高まります。
実際に、指導記録を残していたかどうかが、裁判例において「解雇の妥当性」を判断する重要な要素になっています。たとえば、注意・指導をしたという形跡がなかったり、記録が断片的であったり、改善期間が著しく短かったりすると、裁判所は「もっと軽い懲戒処分で足りた」「解雇は早過ぎた」と判断し、企業側の主張を認めないケースがあります。
このため、企業として問題社員対応を進める際には、以下のような記録管理が不可欠です:
1. 注意・指導を実施した「日時」「場所」「出席者」「指摘した内容」「期待水準」「改善期限」を書面またはメール等で記録する。
2. 指導後、社員がどのような反応を示したか(例えば「自分でも反省します」「改善します」などの発言)を文書化しておく。
3. 改善が見られない場合や再発した場合には、「再度注意」「懲戒処分」「改善計画の提示」など段階的に実施したことを証拠として整理する。
4. 解雇を決断する場合は、「指導・改善機会を与えた」ことが分かる指導記録一式と、就業規則上の解雇事由・懲戒規定・運用実績を照らして、合理性を確保する。
社会保険労務士として多くの企業を支援する中で感じるのは、「指導記録を残していなかった」「記録はあるが内容が抽象的すぎて改善の要求が曖昧だった」という理由で、解雇後に高額な和解金や賠償を支払ったケースが少なくないということです。制度を整えていても、運用の面で記録が欠けていれば、その制度は“安心の盾”とはなりません。
結論として、問題社員対応においてもっとも重要なのは、「解雇ありき」で動くことではなく、“何を指導し、どのように改善を促し、それでも変わらなかった”というプロセスをしっかり記録として残すことにあります。曖昧な記録のまま解雇に踏み切ることは、企業にとって最大の落とし穴となるのです。

落とし穴B 不適切な配置転換や退職勧奨が逆効果に

“問題社員”対応において企業が落ち入りやすい三つ目の罠が、「不適切な配置転換や退職勧奨」です。これらは一見有効な手段に思えますが、目的や方法を誤ると、逆に企業に大きな損害・リスクをもたらすことになります。
まず、配置転換について。企業には業務命令として配置転換を行う権限がありますが、これを「単に問題社員を場所や職種から追い出すため」だけに用いると、法的には「権利の濫用」として無効と判断される可能性があります。たとえば、配置転換が業務上の必要性なく、従業員に著しい不利益を与えるものだったり、退職を誘導する目的であったりすると、裁判所は「無効」とする傾向があります。
たとえば、勤務地の大幅な変更・専門職から一般業務への転換・給与手当の大幅減など、通常の範囲を超える不利益が伴えば、配置転換が「業務命令」ではなく「報復や退職誘導」とみなされることがあります。
こうした不当な配置転換は、訴訟対象となったり、場合によっては従業員が解雇無効を主張する材料となり、企業側が損害賠償等を命じられることも珍しくありません。
次に、退職勧奨もまた落とし穴です。退職勧奨自体は違法ではありませんが、従業員の自発的な意思に任せるという前提が崩れた“説得”や“圧力”が常態化すると、裁判所は「退職強要」や「パワハラ」に該当すると判断します。実際、複数回にわたる長時間面談、暴言・侮辱的言動を伴った勧奨が違法とされた事例があります。
例えば「辞表を書け」「もう君はいらない」「他をあたれ」などの発言を繰り返す、断っても続けるといった態度を取れば、従業員が精神的ダメージを受け、企業に賠償義務が生じることがあります。

社労士が支援する“合法的かつ実務的”な対応手順

指導記録の残し方、就業規則の活用、面談プロセスの重要性

更に、配置転換と退職勧奨が組み合わさるケースもあります。従業員が退職を拒否した直後に「君は東京本社出向」「給料は減らす」などの処置が取られると、それ自体が退職を誘導するための措置と判断される可能性も高くなります。
こうした落とし穴を回避するためには、企業として次のような注意が不可欠です。
第一に、配置転換や退職勧奨を行う際の目的を明確にすること。業務上の合理性・必要性が裏付けられているかを確認し、「問題社員だから変える」というだけではなく、「組織機能を改善するための配置変更」であることを説明できるようにします。
第二に、従業員に与える不利益が通常受忍の範囲を超えていないか慎重に判断すること。例えば、家族介護中の社員への遠方転勤、専門職から全く異なる職務への異動などは不利益が大きく、違法と判断されるケースが多くあります。
第三に、退職勧奨を進める際は手続きとコミュニケーションを丁寧に行うこと。本人の意思を尊重し、任意退職としての説明を明確にし、強制・威圧・侮辱的言動を避ける。面談記録・発言記録・勧奨時の状況も保存しておくべきです。
最後に、専門家である社労士・弁護士と連携して手順を設計すること。他社のケースを参照しつつ、自社に適したプロセスを制度として定め、就業規則や人事制度との整合性を確保することが重要です。
社会保険労務士としての経験から言えば、配置転換・退職勧奨は「問題社員を排除する手段」ではなく、「改善・再構築の手段」であるべきです。誤った使い方をすれば、企業が損をする“逆効果”となり得ます。就業規則と運用、説明・同意、記録・証拠を備えることで、適法かつ実務的に有効な対応を実現しましょう。

まとめと結論(「正しいプロセス」が企業を守る)

“問題社員”対応は、多くの企業が避けたくても避けられない重要なテーマです。従業員一人ひとりが組織の中で機能するためには、適切なルールと手続き、そしてコミュニケーションが必要です。本記事で見てきたように、遅刻・業務拒否・職場の雰囲気を乱す行動などが見られた際、企業が安易に「感情的対応」「記録なし」「制度軽視」で進めてしまうと、結果として訴訟リスクや解雇無効といった大きな損失を招く可能性があります。
日本の労働法制では、従業員を解雇・懲戒とするためには、@客観的に合理的な理由、A社会通念上相当と認められる手続き、という二つの基準が求められます。 このため、たとえその社員の行動自体が問題であっても、プロセスを整えていなければ、裁判所や労働審判で企業側の主張が認められない事態に陥りがちです。記録があいまいで、指導回数も不十分、改善機会を設けていないというときには「解雇無効」の判断が出ることがあります。
そのため、企業が本当に取り組むべきなのは、「正しいプロセス」を制度化・運用化することです。まず、就業規則に懲戒・指導・改善プロセスを明記し、管理職や人事担当者がその内容を理解して現場運用できるよう研修を行うこと。そして、実際に指導を行ったら日時・場所・対象者・指導内容・改善期限・従業員の応答などをきちんと書面または電子記録として残すこと。面談を定期化し、改善状況をフォローアップし、必要ならば更なる処置を検討するといった流れです。
さらに、対応が進む中で「解雇」や「退職勧奨」「配置転換」といった手段を検討する場面では、制度と実態・手続きの整合性が問われます。たとえば、突然の配置転換によって従業員に著しい不利益を与えたり、改善機会を十分に与えずに即座に解雇に至ったりすると、裁判所は「合理性を欠く」と判断する可能性が高まります。 こうした手続き上の不備が、企業が「損をする落とし穴」の典型となっているのです。
結論として、企業が“問題社員”への対応を成功させ、訴訟リスクを抑え、組織の信頼を維持・強化するためには、 「制度(就業規則)・手続き(指導・面談)・証拠(記録)」の三者を併せて整え、運用すること が不可欠です。制度があっても運用がおろそかでは意味がなく、記録があっても制度に根拠がなければ効果は限定されます。これらをワンセットで運用することで、企業は“対応しているが正しく行っている”という立証力を持つことができます。
最後に、問題社員対応は“措置を取って終わり”ではありません。継続的なフォローアップ、そして制度改善・運用改善を通じて職場の健全性を保つことが必要です。企業が人材を守り、組織を維持し、成長を続けるために、正しいプロセスを持つこと――それこそが企業を守る最大の盾となるでしょう。

まとめと結論(「正しいプロセス」が企業を守る)

“問題社員”対応は、多くの企業が避けたくても避けられない重要なテーマです。従業員一人ひとりが組織の中で機能するためには、適切なルールと手続き、そしてコミュニケーションが必要です。本記事で見てきたように、遅刻・業務拒否・職場の雰囲気を乱す行動などが見られた際、企業が安易に「感情的対応」「記録なし」「制度軽視」で進めてしまうと、結果として訴訟リスクや解雇無効といった大きな損失を招く可能性があります。
日本の労働法制では、従業員を解雇・懲戒とするためには、@客観的に合理的な理由、A社会通念上相当と認められる手続き、という二つの基準が求められます。 このため、たとえその社員の行動自体が問題であっても、プロセスを整えていなければ、裁判所や労働審判で企業側の主張が認められない事態に陥りがちです。記録があいまいで、指導回数も不十分、改善機会を設けていないというときには「解雇無効」の判断が出ることがあります。
そのため、企業が本当に取り組むべきなのは、「正しいプロセス」を制度化・運用化することです。まず、就業規則に懲戒・指導・改善プロセスを明記し、管理職や人事担当者がその内容を理解して現場運用できるよう研修を行うこと。そして、実際に指導を行ったら日時・場所・対象者・指導内容・改善期限・従業員の応答などをきちんと書面または電子記録として残すこと。面談を定期化し、改善状況をフォローアップし、必要ならば更なる処置を検討するといった流れです。
さらに、対応が進む中で「解雇」や「退職勧奨」「配置転換」といった手段を検討する場面では、制度と実態・手続きの整合性が問われます。たとえば、突然の配置転換によって従業員に著しい不利益を与えたり、改善機会を十分に与えずに即座に解雇に至ったりすると、裁判所は「合理性を欠く」と判断する可能性が高まります。 こうした手続き上の不備が、企業が「損をする落とし穴」の典型となっているのです。
結論として、企業が“問題社員”への対応を成功させ、訴訟リスクを抑え、組織の信頼を維持・強化するためには、 「制度(就業規則)・手続き(指導・面談)・証拠(記録)」の三者を併せて整え、運用すること が不可欠です。制度があっても運用がおろそかでは意味がなく、記録があっても制度に根拠がなければ効果は限定されます。これらをワンセットで運用することで、企業は“対応しているが正しく行っている”という立証力を持つことができます。
最後に、問題社員対応は“措置を取って終わり”ではありません。継続的なフォローアップ、そして制度改善・運用改善を通じて職場の健全性を保つことが必要です。企業が人材を守り、組織を維持し、成長を続けるために、正しいプロセスを持つこと――それこそが企業を守る最大の盾となるでしょう。
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