作成日：2025/10/02
就業規則に必ず記載すべき「絶対的記載事項」とは？
就業規則の役割と「絶対的記載事項」の重要性（全国的な企業傾向を踏まえて）
企業が安定して成長し続けるためには、従業員との信頼関係を土台とした職場環境づくりが欠かせません。その中核を担うのが「就業規則」です。就業規則は、企業が社員に対して示す“働くためのルールブック”とも言えるものであり、労使間のトラブルを未然に防ぎ、会社としての姿勢を明文化する役割を果たします。にもかかわらず、多くの中小企業では「作ったまま放置されている」「内容が古く、実態と合っていない」といった実情が見受けられます。
特に近年、働き方改革や副業解禁、労働時間の多様化など、労務管理を取り巻く環境は大きく変化しています。こうした変化に対応できる柔軟性と明確性を兼ね備えた就業規則の整備が、ますます重要になっているのです。
その中でも、就業規則に“必ず”記載しなければならない項目、いわゆる「絶対的記載事項」は、法的な観点から最も重視すべき部分です。これらは労働基準法第89条に基づき、常時10人以上の労働者を使用する企業が就業規則に盛り込まなければならない最低限の内容を指します。賃金、労働時間、休日、退職等、労働条件に関する根幹部分がここに該当します。
実際に私がご相談を受ける企業の中には、「就業規則はあるが、絶対的記載事項が網羅されていない」「何をどこまで書けばよいかわからない」という声が多くあります。このような状態のままでは、いざトラブルが発生したときに会社を守るはずの就業規則が“機能しない紙”になってしまいかねません。
また、絶対的記載事項は単なる義務ではなく、労使双方の期待値を明確にするツールでもあります。たとえば、労働時間の始業・終業時刻や休憩時間を明記することで、曖昧な働き方を防ぎ、勤怠トラブルを回避できます。退職に関する定義や手続をきちんと定めることで、退職時の揉め事を最小限に抑えることも可能です。
つまり、絶対的記載事項は“法令遵守”のためだけに存在しているのではなく、企業が健全な経営を行うための「経営ツール」でもあるということです。特に中小企業においては、法的なトラブルに発展する前の予防策として、就業規則の整備は非常に有効です。
本記事では、この「絶対的記載事項」とは具体的に何を指すのか、どのように就業規則に落とし込むべきか、そして記載漏れや誤解によって生じうるリスクとその回避方法について、社会保険労務士の視点から詳しく解説していきます。企業が今できる現実的な対応策を知りたい方にとって、きっと役立つ内容になるはずです。
絶対的記載事項とは何か？就業規則との関係性
社会保険労務士の視点から見た法的根拠と定義
「絶対的記載事項」という言葉は、就業規則を作成または見直す上で避けて通れない重要な概念です。これは単なる“推奨事項”ではなく、労働基準法第89条に明記された、「就業規則に必ず記載しなければならない項目」を指します。法的には、常時10人以上の労働者を雇用している事業場においては、就業規則の作成および所轄の労働基準監督署への届出が義務付けられています。そして、その就業規則には最低限として、絶対的記載事項の内容を含めることが求められています。
労働基準法第89条では、以下のような項目が絶対的記載事項として規定されています：
1. 始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務の場合は就業時転換に関する事項
2. 賃金の決定、計算および支払の方法、賃金の締切および支払の時期ならびに昇給に関する事項
これらは、いずれも労働者にとって直接的な生活や働き方に関わる基本的な条件です。したがって、法律上、企業はこれらの情報を必ず書面に明記し、労働者に周知する義務があります。仮にこれらが欠落していた場合、労使トラブルが発生した際に企業側が不利な立場に置かれるリスクが高くなります。
私は社会保険労務士として、これまで数多くの企業の就業規則をチェック・改訂してきましたが、意外にもこの「絶対的記載事項」が不完全なまま提出・運用されているケースが少なくありません。たとえば「就業時間」が曖昧であったり、「退職・解雇のルール」が詳細に記載されていなかったりするだけで、トラブル時に企業が主張できる法的根拠が薄くなってしまいます。
ここで大切なのは、「法的に記載が義務づけられているから記載する」という消極的な対応ではなく、「企業としてどういった労働条件を明示し、どのように社員と向き合っていくか」という積極的なスタンスを持つことです。就業規則は単なる社内文書ではなく、企業と社員の信頼関係を築く契約のようなものだと考えるべきです。
また、絶対的記載事項はすべての業種・業態に共通する最低限のルールですが、業種によっては補足的な取り決めが必要なケースもあります。たとえば、フレックスタイム制や変形労働時間制を導入している企業では、より詳細な記載が求められるため、社会保険労務士のような専門家によるチェックは不可欠です。
このように、絶対的記載事項は就業規則の“核”となる部分であり、企業経営を守る防波堤でもあります。法令を正しく理解し、それを実務に落とし込むための支援を行うことが、私たち社会保険労務士の大きな使命の一つです。
絶対的記載事項に含まれる内容と具体例
社会保険労務士が企業に伝える7つの必須項目
就業規則に必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」は、労働基準法第89条により定められた最低限のルールです。社会保険労務士として、私は企業に対してこの項目の重要性と実務的な落とし込み方法を常に強調しています。以下に、実際に企業と話す中でよく説明している「7つの必須項目」を具体的に紹介します。
労働者が「何時から何時まで働くのか」を明確に記載する必要があります。実務では、部署や職種により異なる場合は、それぞれ区分して記載することが求められます。ここが曖昧だと、残業代の計算根拠が揺らぎ、トラブルの原因になります。
法定労働時間を超える勤務には休憩の付与が義務づけられています。特に「休憩を何時から何時まで与えるか」「その取り方（分割など）」も含めて具体的に書いておくことが望ましいです。
週に何日休みがあるのか、固定かシフトかなど、休日の原則を明示する必要があります。実際には“法定休日”と“所定休日”を混同している企業もあるため、ここは正確な整理が不可欠です。
年次有給休暇はもちろんのこと、慶弔休暇、産前産後休暇、育児・介護休暇等の制度についても、会社としてどこまで認めているかを明文化する必要があります。最近では時間単位の年休取得制度の記載漏れにも注意が必要です。
基本給・手当・割増賃金のルール、計算式、締日と支払日など、労働者にとって最も関心が高い部分です。ここに曖昧さがあると、未払残業代請求など重大なリスクにつながります。
義務的な昇給制度がない場合でも、「業績・勤務態度等により昇給を行うことがある」といった形で記載しておくことで、期待値のズレを防ぐ効果があります。昇給しない場合のトラブル予防にもなります。
自己都合・会社都合の退職手続、解雇の種類とその事由（懲戒解雇・普通解雇等）を明確に記載することが重要です。これが曖昧だと、退職時のトラブルが長期化する恐れがあります。
以上の7項目は、単に「書かれていればよい」というものではなく、実際の業務フローや職場の実情に即していることが重要です。社会保険労務士として私が心がけているのは、「ひな形のコピペ」ではなく、企業ごとの文化や課題に合わせた“生きたルール”としての就業規則づくりです。
これらの項目を適切に記載・運用することで、企業はトラブルを予防するだけでなく、社員との信頼関係を構築しやすくなります。まさに就業規則は“会社の憲法”と言える存在であり、その骨格となるのがこの7つの絶対的記載事項なのです。
絶対的記載事項を記載しない場合のリスク
トラブル事例と企業が受ける不利益
就業規則における「絶対的記載事項」の不備や未整備は、企業にとって重大な労務トラブルを引き起こす火種となります。社会保険労務士として私がこれまで実際に相談を受けた中でも、「就業規則が曖昧だったために企業が不利な立場に立たされた」という事例は数多くあります。ここでは代表的な事例と、その結果企業が受けた不利益を紹介します。
最も典型的なトラブルは、解雇に関するトラブルです。ある企業では、勤務態度の悪化や無断欠勤を繰り返した社員に対して解雇を通告しました。しかし、就業規則には「解雇事由」が非常に簡略にしか記載されておらず、社員側が「不当解雇だ」として労働基準監督署や弁護士を通じて争ってきたのです。最終的に企業は和解金を支払う形で収束しましたが、労働時間や精神的な負担は大きく、経営者にとっても大きなダメージとなりました。
次に多いのが、残業代の未払い請求に関するトラブルです。ある中小企業では、就業規則に「所定労働時間」や「残業命令の手続」が明確に記載されていなかったため、後になって社員から「サービス残業が常態化していた」と主張され、多額の残業代を遡って請求されました。記録の不備もあり、会社側は否定しきれず、結果的に200万円以上の支払いを余儀なくされました。
また、休日や休暇に関する曖昧なルールも問題になりやすいです。たとえば、ある企業では、年次有給休暇の取得ルールが明文化されておらず、社員が「有給を断られた」と労基署に通報。指導が入り、企業は運用の見直しとともに、職場全体の信頼関係に大きなひびが入りました。こうしたケースでは、就業規則をしっかり整備していれば、予防できた可能性が高いのです。
これらの事例から分かる通り、就業規則が不完全または実態と乖離していることで、企業は以下のような不利益を受ける可能性があります：
- 法的トラブルにより時間・コスト・精神的負担が発生する
- 社員との信頼関係が崩れ、職場の雰囲気が悪化する
- 採用力や定着率が低下し、優秀な人材の確保が難しくなる
社会保険労務士として私が常にお伝えしているのは、「就業規則はトラブルが起きた後に慌てて見直すのでは遅い」ということです。トラブルの芽は小さいうちに摘むのが鉄則であり、そのためには“明確で実態に即したルール”が必要不可欠です。
特に中小企業では、人手不足や属人的な管理が常態化しがちなため、ルールの整備と運用の見直しは喫緊の課題です。私たち社会保険労務士は、その実務面をサポートする専門家として、企業のリスクを未然に防ぐための伴走者となります。
記載内容の見直しと定期的な更新の重要性
実務的な見直し方法と社会保険労務士の活用法
就業規則は「一度作成すれば終わり」というものではありません。法改正や働き方の変化、企業の成長ステージに応じて、定期的に見直し・アップデートすることが不可欠です。とはいえ、いざ見直そうと思っても「何から始めればいいかわからない」「どの部分を修正すべきか不明」という経営者の声も多く聞かれます。そこで、ここでは実務的な見直し手順と、社会保険労務士の有効な活用法をご紹介します。
まず初めのステップは、現行の就業規則の棚卸しです。紙ベースや電子データにかかわらず、現在運用されている就業規則の内容を確認し、「記載が古くなっていないか」「実態と一致しているか」「絶対的記載事項に漏れはないか」などをチェックします。多くの企業では、この時点で複数の不備や矛盾が見つかることが少なくありません。
次に行うべきは、現場とのヒアリングです。管理職や従業員代表者などから、「実際の運用で困っている点」や「ルールの曖昧さによって起きている摩擦」について情報を集めます。就業規則は形式的な書類ではなく、現場と密接にリンクする“運用ルール”であるべきです。ここでのヒアリングが、見直しの精度を大きく左右します。
その後、法改正情報や他社事例も踏まえながら、改訂案を設計します。特に2020年代に入ってからは、同一労働同一賃金、副業・兼業、ハラスメント対策など、就業規則に反映すべきテーマが急増しています。こうした時代背景を正しく読み取り、企業の実情に合わせたカスタマイズが求められます。
ここでこそ、社会保険労務士の出番です。私たちは、労働法や判例に基づく知識だけでなく、これまで多数の企業支援で培った“実務ノウハウ”を持っています。企業側が気づきにくい法的リスクや、将来的に問題化しそうな条文の表現などをプロの視点から精査し、企業と社員の両者にとって納得性のある就業規則を一緒に作り上げます。
さらに、就業規則の変更には労働者代表への意見聴取および労働基準監督署への届出という法的手続きが必要です。このプロセスも社会保険労務士が全面的に代行・サポートすることで、企業側の負担を大幅に軽減することが可能です。
見直し後の社内周知も重要なステップです。改定内容をメール一通で伝えて終わりにするのではなく、説明会の実施やFAQ資料の作成、研修の実施などを通じて、社員が制度を正しく理解し納得できるようにすることで、ルールが“生きたもの”として定着します。
私は社会保険労務士として、「就業規則＝会社を守る盾」であり、同時に「社員と信頼を築く架け橋」だと考えています。ただの法令対応で終わらせるのではなく、“その企業らしいルール”を共に作るパートナーとして、今後も多くの企業をサポートしていきたいと思っています。
まとめと結論（就業規則の整備は企業のリスク対策）
就業規則は、企業が従業員とともに安心・安全な職場環境を築くための基本的なルールです。そして、その中でも「絶対的記載事項」は、企業が法令を遵守し、労使トラブルを未然に防ぐための“最低限にして最重要”の要素です。これを正確かつ明確に整備することは、経営におけるリスク対策として極めて有効であり、企業の信頼性や組織力を高める土台となります。
私たち社会保険労務士は、企業の現状や課題に応じて、形式だけにとどまらない“実態に即した就業規則づくり”を支援しています。多くの企業が誤解しているのは、「法律に書かれているから記載する」という受動的な姿勢です。しかし本来、就業規則は会社の理念や経営方針、職場の文化を映し出す“企業の姿勢そのもの”を表現するものであるべきです。
たとえば、曖昧な労働時間の定義や、解雇事由の記載漏れ、年休の取得ルールが不明確なままでは、いざというときに企業が社員に対して正当な主張をすることが困難になります。結果として、訴訟や行政指導、SNSでの企業イメージ毀損といった、大きなダメージを受ける可能性もあります。これらはすべて、「ルールの不備」という小さなきっかけから始まるものです。
一方で、法令に基づいた就業規則を整備し、それを従業員としっかり共有することで、職場全体に“安心感”と“納得感”が生まれます。これは社員の定着率やモチベーションの向上にもつながり、長期的には企業の競争力強化にも寄与します。つまり、就業規則は単なるリスクヘッジではなく、組織の持続的成長を支える「戦略ツール」でもあるのです。
特に中小企業にとって、労働環境の変化や法改正に柔軟に対応することは、人的リソースの限られた中でこそ重要になります。だからこそ、早めの対応・見直しが不可欠です。そしてその際には、社会保険労務士のような専門家と連携し、客観的な視点と最新の知識を取り入れることが最も効率的かつ確実な方法です。
私はこれまで、数多くの中小企業と伴走しながら、「会社を守り、社員を活かす」就業規則づくりを支援してきました。その経験から断言できるのは、「就業規則を整備することこそが、最大の労務トラブル予防策であり、企業経営の守りを固める最初の一歩である」ということです。
もし、今の就業規則に少しでも不安を感じているなら、それは“見直しのサイン”です。ぜひこの機会に、就業規則の棚卸しから始めてみてください。法令遵守と実務運用を両立する、御社にとって最適なルール設計を、私たち社会保険労務士が全力でサポートいたします。
社会保険労務士に相談する理由とお問い合わせ情報（全国対応可能）
就業規則の整備や見直しは、法的な知識だけでなく、企業ごとの実情や人事労務の運用に対する深い理解が求められる分野です。法改正のたびに内容を更新しなければならない上に、社員への周知、労基署への届出、現場での運用定着といった工程も含まれるため、企業の担当者だけで完結するのは難しいのが現実です。そこで強い味方となるのが、社会保険労務士の存在です。
社会保険労務士は、労働法に基づく専門家として、就業規則の作成・改定から運用指導までをトータルでサポートできる国家資格者です。特に私は、20年以上の実績の中で、累計40,000件を超える労務相談に対応してきました。その多くが、就業規則が適切に整備されていなかったために発生したトラブルであり、「あと一文、規則に記載していれば防げた問題」を数多く見てきました。
そうした経験から、私は「机上の理論ではなく、現場で使える就業規則」にこだわっています。企業の実態に合っていなければ、どんなに法的に正しくても意味がありません。現場の運用にフィットした規則を一緒につくることが、私の最大の強みです。また、私は企業研修やチームビルディングにも注力しており、規則の整備と社内浸透をセットで支援できる点も、他の社労士との大きな差別化ポイントだと自負しています。
さらに、宮城県仙台市に拠点を構えながら、オンライン面談を通じて全国の企業に対応可能な体制を整えております。実際、東京・大阪・名古屋など首都圏・大都市圏の企業様とも継続的な支援実績があり、Zoomやチャットを活用した柔軟なやり取りで、遠方のお客様にも高品質なサービスを提供しています。
「うちの就業規則、内容が古くなっていないか心配だ」「法改正の内容が反映されているか不安」「社員とのトラブルを未然に防ぎたい」――そんなお悩みをお持ちの企業様は、まずは一度ご相談ください。初回のヒアリングでは、御社の現状やリスクポイントを丁寧にお聞きし、必要な改善点を明確にするお手伝いをいたします。
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営業時間：平日9:00〜18:00（土日祝応相談）
企業の未来を守るために、就業規則は“投資”であり“保険”でもあります。社会保険労務士として、企業と従業員がともに安心して成長できる環境づくりを、全力でサポートいたします。お気軽にご連絡ください。
