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作成日:2025/09/23
就業規則に「試用期間」の記載がなくトラブルに発展した中小企業の実例

試用期間に関するトラブルの背景と、就業規則の整備不足が招くリスク

中小企業にとって「試用期間」は採用後の大切なプロセスです。新しく迎え入れた人材が業務や組織に適応できるかを見極める時間であり、企業にとってはミスマッチを早期に発見する機会、従業員にとっては職場環境との相性を確認する機会でもあります。双方にとって意味のある仕組みであるはずですが、現実には思わぬトラブルの原因になることが少なくありません。
その背景には、就業規則や雇用契約書における「試用期間」に関する定め不足や、労使間の認識のズレがあります。とくに中小企業では「慣例的に3か月」「問題なければ本採用」といった曖昧な取り扱いが多く、書面での明文化が十分でないケースが目立ちます。
例えば、試用期間中に勤務態度や能力に問題が見られたために企業が解雇を告げたものの、労働者が「説明もなく一方的に解雇された」と主張して紛争に発展するケースがあります。就業規則に試用期間の長さや延長の可否、期間中の処遇、本採用見送りの基準や手続きを明確に記していなければ、企業側は裁判所で不利な扱いを受けやすくなります。
また法的には、試用期間中であっても労働契約は成立済みであり、労働者の権利は本採用後と同様に守られています。「試用期間中なら簡単に辞めさせられる」と誤解している経営者や管理職は少なくありませんが、合理的な理由や正当な手続きを欠いた解雇は無効となり、企業がリスクを負うことになります。
さらに、試用期間中の給与や社会保険、評価基準などを明示していなかったために、後から「条件が違う」「何を基準に評価されているのか分からない」といった不満が募り、トラブルに発展することもあります。
社会保険労務士として数多くの相談を受けてきた実感として言えるのは、試用期間に関するトラブルの多くは制度の整備不足と説明不足に起因しているということです。最初からルールを明確に整え、就業規則に定めていれば未然に防げる問題がほとんどです。
人材不足が深刻化する現在は「選ばれる時代」です。企業の信頼性や労働条件の透明性が採用力や定着率に直結します。試用期間のルール整備はリスク回避策にとどまらず、企業の魅力を高める取り組みでもあるのです。

試用期間の定義と法的位置づけ

労働契約と試用期間の関係とは?

企業が新たに人材を採用する際、多くの場合に設けられるのが「試用期間」です。数か月間の勤務を通じて能力や適性を見極め、本採用の可否を判断する仕組みですが、この位置づけを誤解したまま運用するとトラブルを招きかねません。
大前提として、試用期間中であっても労働契約は成立済みです。入社日から労働者としての権利と義務が発生しており、「まだ正式な社員ではない」という認識は誤りです。
特に解雇に関しては注意が必要です。「試用期間中なら解雇は簡単」と思い込む経営者は少なくありませんが、実際には合理的な理由と社会通念上の相当性が必要で、これを欠けば解雇は無効とされます。裁判例でも、試用期間中の解雇が「不当解雇」と認定されたケースは多数あります。
また、就業規則や雇用契約書に試用期間の取り扱いを明記していない場合、期間の長さや延長の可否、給与や社会保険の取り扱いが曖昧になり、労働者が誤解する原因となります。結果として法的紛争に発展することも少なくありません。
結論として、試用期間は「労働契約の一形態」であり、企業の一方的な裁量で扱える制度ではありません。制度設計と運用の両面で丁寧な見直しが必要です。

試用期間中でも労働者の権利は守られる

試用期間中は「まだ権利が弱い」と誤解されがちですが、実際には労働法の保護が全面的に及びます。
最低賃金以下の給与設定は違法
社会保険への加入義務は免れない
労災補償や通勤災害補償も当然適用される
これらは試用期間中の労働者にも等しく適用されます。
また、解雇に関しても「試用期間だからすぐ辞めさせられる」という考え方は誤りです。入社から14日を超えていれば解雇予告や予告手当が必要です。理由が不十分であれば「不当解雇」とされる可能性が高いのです。
さらに、パワハラ・セクハラ・マタハラといったハラスメントへの対応も同様に求められます。「短期間だから」と軽視すれば、後に訴訟や行政指導の対象となるリスクがあります。相談窓口や内部通報制度も、試用期間の社員を対象とすることが不可欠です。
要は、試用期間中も正社員と同じく労働者としての権利を尊重する姿勢が重要です。誠実な対応は入社後の信頼構築や定着率の向上にもつながります。

就業規則に試用期間の記載がなかった中小企業の実例

実例@:試用期間中の解雇が無効にされたケース

ある製造業の中小企業では、新卒採用した若手社員に3か月の試用期間を設定していました。入社1か月後、上司が「指示への反応が遅い」「報連相ができない」と評価を下げ、試用期間を待たずに「本採用は見送り」と通告。社員に即日退職を求めました。
社員は「改善の機会も与えられず、不当だ」として労働組合に相談。労働局でのあっせんを経て、最終的に企業が解決金を支払って和解しました。
問題点は以下の3つです。
解雇理由が曖昧:「反応が遅い」といった主観的な評価は合理性を欠く。
手続きの不備:試用中であっても解雇には予告や予告手当が必要。即日退職は違法のリスク。
規則の不備:就業規則に評価基準や延長可否が記載されておらず、労働者の予測可能性を欠いた。
試用期間中であっても、解雇には正当な理由と手続きが求められます。曖昧な判断や説明不足は企業の信用を大きく損ねます。

実例A:試用期間の条件を巡るトラブルと賠償請求

サービス業のある企業では、試用期間中は「時給制」、本採用後は「月給制」に切り替える方針でした。しかしその内容を契約書や労働条件通知書に明記せず、「給与:月給20万円」とだけ記載していました。
結果として、労働者は初月の給与が想定より少ないことに疑問を持ち、「契約書に記載がない条件変更は不当だ」と主張。労基署に相談し、最終的に差額賃金と解決金の支払いを余儀なくされました。
問題は条件の明文化不足です。労働基準法では賃金や試用条件の明示が義務付けられており、口頭説明は紛争時に証拠になりません。労働者は「書面に書かれた内容」を信じるため、契約書と異なる運用はトラブルを招きます。
このケースは「試用期間だから簡略化してよい」という油断の典型例です。入社時こそ丁寧な説明と文書整備が求められます。

試用期間に関する就業規則の整備ポイント

明記すべき具体的な条項とは?

試用期間を就業規則に記載する際は、以下を明確にすることが不可欠です。
試用期間の長さと延長の可否
試用中の賃金や勤務条件(本採用との差異も明示)
本採用判断の基準(出勤率・業務遂行力・協調性など)
解雇の可能性と手続き(予告・手当を含む)
本採用後の条件移行の時期と内容
これらを具体的に記載することで、労働者に安心感を与えると同時に、企業の防御策にもなります。

社労士が見る“曖昧さ”が招く誤解とリスク

「最長6か月」とだけ書いた場合、労働者は「6か月は解雇されない」と誤解しがちです。企業側の意図が「状況次第で1か月や3か月でも判断可能」であっても、食い違いはトラブルの元になります。
また「勤務態度が不良なら本採用見送り」とだけ書くのも危険です。勤務態度の定義が不明確だと、企業の判断が合理的と認められにくいのです。
曖昧さが招くリスクは、
信頼関係の崩壊
労務トラブルの顕在化
企業イメージの低下
に直結します。就業規則は「具体的で明文化された内容」にすることが基本です。

トラブルを防ぐための運用と周知の工夫

採用時に伝えるべき情報と説明の方法

信頼関係を築く第一歩は採用時の説明です。労働条件通知書に記載する内容を中心に、試用期間の長さ、延長条件、給与や待遇の違い、本採用基準、採用見送り時の扱いなどを丁寧に説明することが重要です。
書面を渡すだけではなく、対面やオンラインで口頭説明を行い、質疑に応じることが必要です。さらに、説明の記録を残し、署名や確認書を得ておくことで、後の紛争を防ぐ有力な証拠となります。

社内での理解を深めるための研修と書面化

制度を整えても、社内に浸透していなければ意味がありません。入社時研修や管理職研修を通じて制度の趣旨やルールを繰り返し伝えることが大切です。
あわせて、イントラネットへの掲載やハンドブック配布、FAQの整備など、社員がいつでも確認できる仕組みをつくることが有効です。説明会や研修の記録も残し、後の「知らなかった」という主張に備えることが企業防衛になります。

まとめと結論(試用期間を巡るトラブルを未然に防ぐには)

試用期間は双方にとって「見極めの期間」ですが、曖昧な運用や説明不足がトラブルの引き金になります。
防ぐために必要なのは次の3点です。
制度の明文化:就業規則や契約書に詳細を記載する
採用時の丁寧な説明と記録:誤解を防ぐために必須
社内での周知と運用:制度を現場に浸透させる仕組みづくり
この三位一体の対策が、トラブルを防ぎ、健全な人材活用を実現します。

社会保険労務士に相談するメリットとお問い合わせ情報(全国対応可能)

試用期間の制度設計や運用は、採用の第一歩を左右し、将来のトラブル防止にも直結します。その整備を支援できるのが社会保険労務士です。
社労士に相談するメリット
法令に基づいた確実な制度設計
労働関連法規に精通し、実務に即したルールづくりを支援。
リスク管理の視点を取り入れられる
豊富な相談実績から、現場で起こり得るトラブルを踏まえた実践的アドバイスが可能。
運用・周知まで支援
規則作成だけでなく、説明方法や研修体制までトータルで伴走。
当事務所では全国対応が可能で、オンライン相談にも対応しています。初回相談は無料ですので、制度の見直しを検討される際はお気軽にご相談ください。
高山社労士事務所
対応エリア:全国(オンライン可)
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メール:t-sh-j@takayama-office.jp
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✦ 社労士に相談することは「制度づくり」にとどまらず、企業と従業員が安心して働ける職場づくりの第一歩です。