作成日:2025/09/11
2025年問題に備える!企業が今すぐ見直すべき就業規則のポイント
2025年問題の概要と、企業が直面する課題
「2025年問題」とは、いわゆる団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる年のこと。社会の構造が大きく変わり、労働力人口は減少、医療・介護ニーズは急増し、企業では世代交代が一気に進みます。経営や労務管理の前提が変わる中で、特に中小企業は限られた人材をどう活かし、トラブルを防ぎながら持続的に経営するかが、いま大きなテーマです。
私は2003年に社会保険労務士として開業し、これまで延べ400社以上・4万件超の労務相談に携わってきました。現場で痛感するのは、就業規則は“社内ルール集”だけではなく、経営リスクを抑え、社員との信頼を築くための「会社の憲法」でもあるということ。ところが、作ったまま更新が止まり、法改正や社会の変化に追いつけていない企業が少なくありません。
だからこそ今、就業規則を「経営戦略の一部」として捉え直すタイミングです。高年齢者の継続雇用、柔軟な働き方、副業・兼業のルール、ハラスメント防止――いずれもトラブルを防ぎ、会社の信頼性を高めるうえで欠かせません。
「どこに相談すればいいか分からない」という声もよく聞きます。私は制度の説明にとどまらず、経営者の目線で“すぐ動ける”具体策まで落とし込むことを大切にしており、その伴走姿勢は「相談しやすい」「頼れる」と評価いただいています。
本記事では、現場の事例や経験を交えながら、2025年問題に向けた就業規則の見直しポイントをかみ砕いて解説します。制度変更の話に終わらせず、「自社の未来を守るために今やるべきこと」へとつなげていきます。
2025年問題とは何か?就業規則を見直すべき理由
高齢化・人手不足・働き方改革がもたらす影響とは
2025年問題の象徴は「急速な高齢化」。後期高齢者の増加は社会保障だけでなく、企業活動にも直結します。労働力人口の減少で、中小企業では「人が足りない・辞める・育たない」という悩みが一層深刻化します。
求められるのは、働き方の見直しと柔軟な労務管理。60歳定年+再雇用の枠組みに加え、70歳までの就業機会確保が“努力義務”となった今、就業規則にきちんと制度を落とし込めていないと、現場は混乱しがちです。
一方、若手を中心に多様な働き方への期待は拡大。テレワークやフレックス、副業・兼業の容認は、採用・定着の競争力に直結します。制度は導入して終わりではなく、就業規則で明文化し、運用を見える化することがトラブル防止の近道です。
「制度はあるが運用で迷う」「認識のズレで揉めた」という相談は後を絶ちません。多くは、事前の整備と周知があれば避けられたケースです。いま企業が目指すべきは一律管理から“個別最適”へ。価値観やライフスタイルに合わせた設計を支える土台こそ、実は就業規則なのです。
私は、労働環境の整備は経営戦略そのものだと考えています。高齢化・人手不足・働き方改革への備えの答えの一つは、「就業規則の見直しと運用改善」にあります。
社会保険労務士の視点で見る企業リスクと対策の必要性
リスクは、見えにくいところに潜みます。表面上は整っていても、運用が追いつかずトラブルに発展――現場で何度も見てきました。特に今は、高齢者雇用の延長、副業の増加、柔軟な働き方の拡大に社内体制が追いつかないことが大きなリスクです。
「65歳以降の雇用条件が曖昧」「副業はOKだが情報管理が甘い」など、曖昧運用は火種になります。法令順守だけでは足りず、実態に合うルールを就業規則で明文化し、周知まで設計することが大切。ここが社労士の腕の見せ所です。
私は、条文の修正にとどまらず、「どう運用するか」「どう伝えて納得を得るか」まで一貫して伴走します。これにより、信頼関係が深まり、トラブルの発生は目に見えて減っていきます。
副業やテレワークが“例外”でなくなった今、前提は「変化に強い就業規則」。定期的な見直しと柔軟なアップデートが欠かせません。外部の客観的視点を入れることは、その近道です。
企業が今すぐ見直すべき就業規則のポイント
高年齢者雇用に関するルール整備
これからの労働市場では、高齢者の存在感が一段と高まります。再雇用の現場では、「待遇や契約が曖昧で毎年揉める」「他の社員とのバランスが難しい」といった相談が多く、背景には“方針の不明確さ”があります。
再雇用条件、期間、職務、評価、賃金――これらを就業規則や契約書に明確化しない運用は、本人との齟齬だけでなく、公平感の欠如による不満につながります。改正高年齢者雇用安定法の「70歳までの就業機会確保」の努力義務を、自社に合う制度として具体化することが重要です。
私はまず現状を丁寧にヒアリングし、その会社に合うモデル設計からご一緒します。法の要件だけでなく、既存社員とのバランス、企業文化、将来の組織像まで見据えて設計。規程改定、契約書雛形、説明会の実施など運用まで伴走することで、トラブルを未然に防ぎます。
高年齢者雇用は“延長”ではなく“新しい雇用”。年齢に関わらず責任とやりがいが持てる設計が、個人のモチベーションと組織の活性化を生みます。第一歩は、制度とルールの明文化です。
多様な働き方(テレワーク・副業など)への対応
テレワークや副業・兼業は、もはや一過性ではありません。「制度は入れたがトラブルが増えた」「人によって対応が違う」――原因の多くは、就業規則での明文化不足と、運用方針の不共有です。
副業は、原則禁止から“申請に基づき許可”へと見直す企業が増えています。ただし、「何が副業か」「申請・審査の基準」「業務影響や情報漏えいへの対応」を決めなければ、判断は曖昧になります。私は「申請制+審査基準の明確化+定期報告」というモデルで、安全性と柔軟性の両立を提案しています。
テレワークも、勤怠管理、オン・オフの線引き、評価との整合など、運用課題が多い領域。就業規則や関連規程で「業務専念義務」「情報管理」「始業終業の報告」など、シンプルで実行可能なルールを定め、共通認識を作ることが鍵です。
“自由”は“責任”とセット。ルールの明文化と周知が、安心と成果を両立させます。ここでも、社労士が制度設計から運用まで並走する価値は大きいと考えています。
ハラスメント防止規定の最新動向
ハラスメント防止は、もはや企業経営の基本条件です。パワハラ防止措置は2022年4月から中小企業にも義務化。いまはSOGIハラやリモートハラスメントなど新たな形も注目され、企業には柔軟で実効性のあるルールが求められます。
「どこからがハラスメントか分からない」「窓口が機能していない」といった声の裏側には、規程の不十分さや運用のミスマッチが潜みます。私は、定義の明確化、相談窓口と対応フローの文書化、関係者の人権配慮まで含め、“運用できる条文”にこだわります。
研修・周知が伴わなければ、ルールは機能しません。現場で使える言葉と事例での研修設計・実施支援まで含め、社員が「自分ごと」として理解できる状態をつくることが重要です。
よくある就業規則の落とし穴と2025年問題への備え
社会保険労務士が現場で見た見落とされがちなポイント
ぱっと見は整っていても、実務に噛み合っていない――そんな“見えない穴”が規程には残りがちです。
代表例が懲戒規定。種類だけ並べ、行為の定義が曖昧、手続や弁明機会が未整備だと、いざ処分の段で揉めます。試用期間も同様で、基準や延長の可否が不明確だと、不当解雇と評価されるリスクがあります。
育児・介護、兼業、副業、退職後の機密保持など、改正や社会変化を反映できていない条文も要注意。いざというとき「ルールがない・形だけ」と見なされると、企業側は不利です。
私は、法対応で終わらせず“使えるツール”に仕上げることを重視。現場の実情を丁寧に聞き、実際の相談やトラブル事例を織り込んで条文に意味を持たせます。定期点検で「使えているか」「現場とずれていないか」を確認するサイクルを回すことが肝です。
トラブルを未然に防ぐためのチェックリスト
就業規則は“企業の防波堤”。形だけ立派でも、現場に合わず運用されていなければ意味がありません。見直しの際は、次のポイントを確認してください。
育児・介護、ハラスメント、防止措置、副業・兼業、高年齢者雇用など。古い条文は信頼低下と法的リスクにつながります。
「重大な背信行為」など曖昧表現はトラブルの元。種類・対象行為・手続の流れまで、条文で具体化しましょう。
作って終わりはNG。説明会、社内ポータル、入社時オリエンテーションなど、共有の仕組みを。
就業時間や休憩、導入済み制度(テレワーク、フレックス等)が規程に反映されているか確認を。
ハラスメントやメンタル不調は初動が命。どこに、どう相談すればよいかを明確に。
チェックリストで早期に芽を摘むことで、未然防止が進みます。策定から運用まで一貫して支援し、「備えある経営」を実装していきましょう。
2025年問題への対応がもたらす企業のメリット
働きやすい職場づくりによる人材確保
人手不足の今、採用は待遇だけの勝負ではありません。求職者が重視するのは「安心して働き続けられるか」。育児・介護と両立しやすいフレックス、副業を認める柔軟さ、テレワーク、ハラスメント防止――こうした仕組みが就業規則に明記され、周知され、機能している企業には人が集まります。
大切なのは「ダメなことの列挙」だけでなく、「どうすれば安心して働けるか」という前向きな設計。相談しやすい環境、キャリア支援、自己申告や定期面談の制度化など、企業が“社員を大切にしている”姿勢は、内外の評価に直結します。
職場環境を整えた結果、離職が減り、紹介採用が増え、求人なしでも人が集まる――そんな事例も少なくありません。働きやすさは見えない資産。その“見える化”に、就業規則が効きます。
労務トラブルの回避と企業イメージ向上
残業代、ハラスメント、解雇・雇止め、契約不一致――労務トラブルはSNSでの拡散も含め、ブランドに直撃します。多くの相談は「起きてから」ですが、就業規則の整備と周知で“起こる前に”防げるケースが大半です。
明文化されたルールを共有し、日常運用する。これが最も効果的な抑止策です。さらに、対外的にも「安心して働ける環境」を示すことで採用力が上がり、企業イメージも向上します。万一の発生時も、備えと対応姿勢が社会評価を左右します。
まとめと結論
2025年問題で、労務の常識は大きく更新されます。人口減、高齢者就業、多様な働き方、権利意識の高まり――これらにまず効くのが「就業規則の見直しと整備」です。
就業規則は、トラブルを防ぎ、安心して働ける環境をつくる“企業の憲法”。その内容は、コンプライアンスや働きやすさへのメッセージでもあります。規則を現場で機能させた企業では、雰囲気の改善、信頼関係の強化、採用の円滑化が実感されています。
逆に、古いまま・テンプレのままでは、変化に耐えられません。高齢者雇用、副業、テレワーク、ハラスメント防止――悩ましいテーマほど、規則に反映されていれば、感情論ではなくルールに沿って対応できます。
そして何より、見直し自体が「社員を大切にする」明確なサインになります。2025年以降の安定と成長のために、今こそ“自社らしい働き方”を制度として整えるとき。社労士として、現場を知る伴走者として、これからも全力で支援します。
社会保険労務士に相談する理由とお問い合わせ情報
環境変化への対応は、制度導入だけで終わりません。自社に合う形へ落とし込み、運用まで設計してこそ機能します。そのために活用してほしいのが社会保険労務士(社労士)です。
社労士は、労務・社会保険手続やトラブル対応のプロであり、就業規則の作成・見直しの専門家。中小企業では人事専門人材が不足しがちだからこそ、第三者の視点と“動ける具体策”が活きます。私自身、400社超の支援で、その価値を実感いただいてきました。
アドバイスで終わらせず、文案作成、社内説明資料、説明会サポート、運用後のフォローまで一貫対応。大手事務所と並行して“セカンドオピニオン”としてご利用いただくケースも多くあります。オンライン中心で全国対応可能。スピード感のあるやり取りを大切にしています。
「何から手をつければいいか分からない」「自社に合った規則にしたい」「将来のトラブルを防ぎたい」――まずはお気軽にご相談ください。初回相談は無料。ご希望があれば現行就業規則の簡易診断もいたします。
メール:t-sh-j@takayama-office.jp
※お問い合わせフォーム・オンライン予約もご利用いただけます。
就業規則は、経営と組織づくりの土台。その土台づくりを“相談できる社労士”と一緒に進めることが、これからの最大のリスク対策だと私は考えます。